フリーランス記者の存在意義

記者クラブに所属する大手メディアの記者ではなく、フリーランスの記者の存在がなぜ必要なのか。フリーランス記者である筆者が自らの経験に基づいて説明します。
犬飼淳 2022.11.11
誰でも

こんにちは。犬飼淳です。

記者クラブに所属する大手メディアの記者ではなく、フリーランスの記者の存在がなぜ必要なのか。今回のニュースレターでは、その理由をフリーランス記者である筆者が自らの経験に基づいて説明します。

*政治とも報道とも縁遠い業界で10年以上会社員を続けていた私が、今年3月に会社を退職した経緯については、4月に配信したニュースレターを参照ください

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翻訳不可能な日本独自の奇妙な「Kisha Club」

政府、官公庁、自治体、政党、業界団体などの各組織への取材を目的に大手メディアを中心に構成される、日本の「記者クラブ」制度。

大手メディア以外の記者の会見参加も認める海外の「Press Club」とは一線を画す排他的な制度で翻訳不可能なため、「Kisha Club(記者クラブ)」は日本語がそのまま英語表記となっています。「CHIKAN(痴漢)」や「KAROSHI(過労死)」と並んで、日本独自の悪習を象徴する言葉とも言えます。

フランスに本部を置く「国境なき記者団」も、今年の世界報道自由度ランキングで71位にまで後退した日本について、日本の記者クラブ制度の問題点を指摘しています。

「日本の記者クラブ制度は、記者会見への参加や取材を既存の大手メディアに限定し、記者の自己検閲を招いている。フリーランス記者や外国人記者に対する露骨な差別でもある」

記者クラブ制度は国民の知る権利を侵害する元凶

一方、大手メディアの関係者たちは口を揃えて「記者クラブ制度のおかげで、言論・報道の自由や国民の知る権利が守られている」と、海外からの指摘とは真逆の内容を主張しています。国内でも記者クラブへの肯定的な評価も多く見られます。

「記者クラブ制度」によって、ルールに則った報道機関の秩序ある取材活動が保たれ、言論の自由、報道の自由が維持されています。もし、仮に「記者クラブ制度」がなく、自由な取材が許されるとしたら、取材の現場にはいろいろな人が紛れ、中には反社会勢力やテロを目的とした集団が入ることも阻止できず、混乱を招く状況も考えられます
情報発表に消極的な公的機関に対して、記者クラブが記者会見を求めることで実現させてきたという事例があります。つまり、「言論・報道の自由」と、国民の知る権利のために培われてきた仕組みであると言える

 複数の会見(横浜市長、総理大臣 等)に自ら参加した筆者の立場で言わせて頂くと、こうした「記者クラブ制度のおかげで、言論・報道の自由や国民の知る権利が守られている」という主張は真っ赤な嘘実態は真逆です。私が会見で目にしたのは、権力者に都合の良い「広報」を「報道」と称して伝書鳩のように垂れ流す記者たちと、情報を優先的に与えることで懐柔する権力者たちの姿でした。閉鎖的な制度を隠れ蓑に権力者と記者クラブはあぐらをかいているに過ぎません。記者クラブ制度は国民の「知る権利」を侵害する悪習です。もちろん、大手メディアの記者の中にも「自分の頭で考えて、一般国民目線の感覚で質問し、記事を書く記者」は決してゼロではありません。しかし、私がこれまで参加したどの会見(横浜市長、総理大臣 等)においても、その割合は残念ながら1割程度にとどまり、圧倒的な少数派です。

記者クラブ制度が国民の知る権利を侵害し続ける中、フリーランス記者である筆者が微力ながら抵抗した事例を2つ紹介したいと思います。

具体例1 横浜市のイカサマによる学級閉鎖基準変更

横浜市は2022年2月、山中竹春市長がイカサマと呼んで差し支えない方法で調査データの結果を捻じ曲げ、曖昧な根拠で学級閉鎖の基準を変更。見かけの数字(学級閉鎖・休校)は改善させた一方、児童・保護者・教職員を高い感染リスクに晒し続けました。この問題について、私は4月21日の会見で山中市長を具体的に追及し、市長は完全に回答不能に陥りました。詳細は以下のニュースレターを参照ください。

しかし、この会見に同席した記者クラブ(横浜市政記者会)は、この質疑に一切の関心を示さず、後追い報道は皆無。それどころか、2月に横浜市の誤った情報を垂れ流した記事の訂正すらも行いませんでした。市民の知る権利を侵害するにとどまらず、ミスリードを招く「広報」の垂れ流しによって、市民の命と健康を今もなお脅かし続けていると言えます。

具体例2 導入前提の「広報」に徹する大手メディアのインボイス報道

インボイスをめぐっては、まともな導入根拠はなく本当の狙いは将来的な20%超の消費増税である可能性が極めて高いこと、導入後は例外なく全ての国民が多大な被害を受けることを国会質疑などにもとづいて、私はこのニュースレターで繰り返しお伝えしてきました。

しかし、大手メディアがこうした「事実」を具体的に報じることは、導入まで1年を切った2022年11月現在もほぼ皆無です。それどころか財務省や国税庁による不正確な情報を伝書鳩のように垂れ流す悪質な「広報」記事が目立ちます。(導入を前提にして登録率の低さを問題にする、あたかも導入根拠が存在するかのように見せかける、等)

*インボイス登録率を水増しした朝日新聞の問題は筆者が集英社オンラインに寄稿した記事 参照

*「複数税率下での適切課税に必要」という誤情報を垂れ流したNHKの問題は筆者のツイート 参照

最も象徴的な出来事は、10月28日の総理大臣記者会見。私がインボイスの導入根拠を問い質したものの岸田首相は一言も説明できず、インボイスにまともな導入根拠は存在しないことがこれ以上ないほど鮮明に露呈しました。しかし、その場に同席した記者クラブ(内閣記者会)はこの事実を完全スルーして、一切報じませんでした。

*内閣記者会 常勤幹事社19社の内訳は筆者のツイート参照

質疑の詳細は以下のニュースレターを参照ください。

先ほどの横浜市の例と同様、記者クラブは国民の知る権利を侵害するにとどまらず、ミスリードを招く「広報」の垂れ流しによって、国民生活を脅かしていると言えます。

***

フリーランス記者が活動を継続するために

改めて整理すると、記者クラブは以下のような構造的問題を抱えています。

  • 取材対象の見解と異なる内容を報道するには、自らが汗をかいて裏どりをする手間がかかる上、正確性の責任を自らが負わなければならない

  • その内容が取材対象にとって都合の悪い内容の場合、取材対象からの情報提供が滞る恐れがある

  • 従って、取材対象の発表を伝書鳩のように垂れ流すことに徹した方が、無難に会社員生活を過ごしたい記者にとってはメリットが大きい。自らのリスクを最低限に抑えつつ、記事のノルマを達成できるため

*フリーランス記者であっても取材対象と近づき過ぎた場合に同様の問題が起きる可能性はありますが、記者クラブのように組織化されていないため 稀なケースと考えられます

一方、利害関係に縛られず独立して取材・検証を行えるというフリーランス記者としての私の強みは、収益基盤が脆弱という弱みも抱えています。私は現在、安定的な収益基盤をこのニュースレターの有料購読(月額600円)から得ることを目指しています。ありがたいことにもっと多くの金額を支援をしたいという声も頂いていますが、一部の方から大きな金額を頂いてしまうと、「利害関係に縛られず独立して取材・検証を行える」という最大の強みが損なわれる恐れがあるため、基本的にお断りしています。

しかし、公共メディアを資金面で応援する文化がまだまだ根付いていないように思えるこの国では、「大事な情報だからこそ多くの人が読めるようにタダで公開してほしい」「そもそも政治報道にお金を払おうと思えない」という声も根強く、難しさも感じています。公共性が非常に高いと判断した内容は自らの労力や採算を度外視して無料購読者にも公開する方針を続けていますが、それは自らの収益基盤の安定化には反しています。

ただ、この方向性が間違っていないと思える出来事がつい最近ありました。

これまでコロナ対策で高い評価を得てきた、自らもフリー記者出身である保坂展人 世田谷区長が自らの会見からフリー記者を排除するという信じ難い事件を引き起こしたのです。

実は、保坂区長には約1年前に私のニュースレター「PCR検査をめぐる主張の記録(2020年2月)」をツイートで肯定的に紹介して頂いたことがあります。

保坂展人
@hosakanobuto
必要な作業ですね。→「積極的なPCR検査が医療崩壊を招く」という、世界的にも日本でしか見られない独自の主張はいったい何だったのか。いつ、どのようにして、誰が唱え始めたのかを徹底的に検証したい…(犬飼淳氏
2021.09.05)
上 昌広 @KamiMasahiro
PCR検査をめぐる、専門家・有識者・著名人の主張内容の記録(2020年2月) https://t.co/U9yt5Nn960
2021/09/19 11:24
131Retweet 240Likes

theletterの仕組みでは購読者を「メールアドレス」でしか認識できないため、保坂区長が有料購読者なのかを私が確認する術はありません。しかし、もし私が金額に上限を設けずに支援を受け付ける方針を採用して、かつ保坂区長からまとまった金額の支援を受け、さらに私がそのことを認識していた場合、どうなっていたでしょうか。大口の資金提供者を批判することになるため、今回のフリー記者排除を率直に報じることは難しかったでしょう。政府から軽減税率の恩恵を受けた新聞社がインボイスや消費税の問題を十分に報じられないことと同じ構図です。

多くの人から少しずつ平等に支援して頂くことで、利害関係に縛られず独立して取材・検証を行う私の方針はやはり間違っていなかったと感じます。ただし、最終的な成否は、やはり私の活動に共感して支援して頂く方々の輪を広げられるかに懸かっています。

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2022年11月11日 犬飼淳

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