Colabo対暇空茜 名誉毀損訴訟 一審判決の成果と課題

若年女性支援の活動を続ける団体「Colabo」への暇空茜氏の事実無根のデマによる誹謗中傷に対する名誉毀損訴訟。一審判決(2024年7月18日 東京地裁)の結果を判決文および報告集会に基づいてお伝えします。
犬飼淳 2024.07.20
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この記事を書いた理由

  • Colaboをめぐる問題の本質は「Colabo側の税金を投入した事業の不正」ではなく、「暇空茜氏がデマの拡散によって収益をあげる誹謗中傷ビジネスに手を染めていること」である

  • 加害者の中心人物である暇空茜氏は、日本では名誉毀損訴訟の賠償額が比較的少ないことを背景に、「提訴されても賠償額以上に収益(カンパ・YouTube等)を得られる」と豪語し、もはや司法制度すらも毀損している

この記事で理解できること

  • Colabo対暇空茜 名誉毀損訴訟 一審判決で裁判所に「認められた内容」と「認められなかった内容」

  • 誹謗中傷や訴訟を収益化するという新たなケースの名誉毀損訴訟において、裁判所は柔軟に判断できたのか

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経緯の振り返り

若年女性支援の活動を続けてきた一般社団法人Colaboに対する事実無根のデマによる誹謗中傷の拡散。2022年11月にColaboが暇空茜氏を提訴した名誉毀損訴訟(以降「本訴訟」と記載する場合あり)は約1年8ヶ月を要し、今年(2024年)7月18日についに東京地裁で一審判決を迎えました。

*約2年に渡る経緯の前提知識が無い場合、必要に応じてこれまでに配信した以下ニュースレターを参照下さい。

▼昨年(2023年)1月4日の監査結果発表後、3つの観点(誹謗中傷の真偽、東京都の監査結果、監査結果の各社報道)の整理

▼昨年(2023年)3月3日の再調査発表後、各社報道の整理

▼攻撃に加担した政治家たち *2023年4月時点

▼攻撃の発端となった2022年8月の出来事

▼Colaboに限らず女性支援団体全体に及んだ悪影響

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本訴訟の概要

暇空茜氏をめぐる訴訟は数が多いため、本訴訟の概要を以下に整理します。

  • 2022年11月29日に東京地裁に提起された名誉毀損による損害賠償請求訴訟

  • 原告はColabo および 仁藤夢乃氏、被告は暇空茜氏(本名:水原清晃)

  • 原告が求めた内容は、損害賠償金1100万円の支払、本件各投稿の削除、謝罪文の掲載など

  • 訴えの対象とした主なデマは、「タコ部屋に住まわせて生活保護を受給させ、毎月1人6万5千円ずつ徴収している」(後述の判決文「本件摘示事実1」と対応)と「1LDKに3人の女性を住まわせて3人分の生活保護を受給させている」(同じく「本件摘示事実2」と対応)

*暇空茜氏が発信したデマは膨大なため本訴訟では数を絞っている。膨大なデマの全容は2022年11月29日提訴記者会見の配布資料 参照

最も深刻な被害を受けたColaboが暇空茜氏を直接訴えた裁判であり、一連の訴訟の中で最も重要性が高いと言えます。

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本訴訟 一審判決の概要

結果、暇空茜氏が発したデマについては、Colaboの完全勝利と言える判決が下りました。Colaboの主張は基本的に全て認められた一方、暇空茜氏の主張は全て否定。つまり、暇空茜氏の情報発信は悪質なデマであると裁判所が認定したのです。しかも、暇空茜氏の主張は「無理がある」「あえて曲解している」とかなり強い表現で否定されている箇所が散見される上、デマを発した動機についても「何ら合理的な根拠もなく」「自らの利益のために」「自らの好む漫画やアニメなどのコンテンツを批判する原告仁藤に対し強い敵意を抱き」などかなり踏み込んだ表現で糾弾されています。

筆者はこれまでに複数の訴訟の判決文に目を通した経験があり、一般的に裁判官はかなり慎重で100%確実に断言できる内容しか書きません。一般人が判決文を読むと奥歯に物が挟まったような表現に見えることが多い中、ここまで直接的な表現で一方(被告)のみが断罪される判決文はかなり珍しいです。暇空茜氏の主張はそれほど荒唐無稽だったということです。

ただ、Colaboの主張が全て認められたわけではありません。具体的には、損害賠償額謝罪文掲載の2点は、Colabo主張と裁判所判断に大きな開きがありました。

まず損害賠償額の裁判所判断は220万円。約2年にわたってColaboが被った損害(寄付金の減少、説明対応のコスト、シェルター移転のコスト等)には遠く及ばないであろう金額です。

©️2024 Jun Inukai

©️2024 Jun Inukai

原告が主張した1100万円との差は、実に880万円にのぼります。

©️2024 Jun Inukai

©️2024 Jun Inukai

また、Colabo側が求めた謝罪文掲載については、暇空茜氏の主張が一部通る形で裁判所判断では必要性が認められませんでした。 *筆者が確認した限り、暇空茜氏の主張が裁判所判断で肯定的に採用されたのはこの1点のみ

要は、暇空茜氏の情報発信が悪質なデマであることはほぼ完璧に認められたことは大きな成果であるものの、被害の大きさ(損害賠償額)や深刻さ(謝罪文掲載の必要性)が裁判官に伝わり切らなかったという課題も残ったと言えます。

こうした成果と課題については、Colabo側弁護団が当日に記者会見および報告集会で詳しく説明しており、お時間に余裕がある方は以下の動画をご視聴頂ければ、さらに詳細が伝わるはずです。

▼記者会見

*冒頭の約6分間で神原元弁護士が判決のポイントを説明

▼報告集会

*1分~6分頃に神原元弁護士が、19分~24分頃に太田啓子弁護士が判決のポイントを説明

*24分~31分頃に角田由紀子弁護士が損害賠償額の低さについて背景(裁判官のジェンダー教育の遅れ)を含めて説明

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認められた主張と認められなかった主張

とはいえ映像を視聴する余裕が無い方、判決文を詳しく確認したい方も多いと思いますので、原告・被告の主張に対して裁判所が具体的にどのような判断を下したのかをこれ以降で紹介していきます。具体的には、判決文に記載された6つの争点に沿って、判決文を忠実に引用しつつ、適宜色分けしながら計6枚のスライドに整理していきます。

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続きは、6073文字あります。
  • 争点1 本件各投稿が原告らの社会的評価を低下させる事実を摘示したものといえるか
  • 争点2 本件各投稿につき真実性又は真実相当性の抗弁が成立するか
  • 争点3 原告らが本件各投稿による社会的評価の低下を受忍すべきであるか、争点4 原告らの請求が権利濫用にあたるか
  • 争点5 原告らの損害の有無及びその額
  • 争点6 本件各投稿の削除及び謝罪文の掲載が必要であるか

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