高得点が原因で不合格!高校入試が運任せのギャンブルと化すESAT-J「逆転現象」のカラクリ
*今回は公共性が非常に高く、当事者である中学生に一人でも多く届けるべき内容であると判断したため、通常と異なり全ての内容を無料公開します。メールアドレス登録すら不要で最後まで全て読めます。
このニュースレターはフリー記者の犬飼が「大手メディアが報じない読み応えのある検証記事」を月に6 本以上(目安)配信します。皆さんの生活に影響する政策や報道の複雑な問題点を、正しく理解できるように分かりやすく解説しています。
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この記事を書いた理由
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英語スピーキングテスト(ESAT-J)の都立高校入試活用によって、入試の「公平性」が破壊されつつある
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このまま東京都での実績が既成事実化すればベネッセが他県に横展開することは必至であり、日本全国の高校受験生・保護者・教育関係者が多大な不利益を被る
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特に、「逆転現象」(受験生の実力と無関係な形で、ESAT-Jスコアによって合格者と不合格者が逆転)によって、高校の合否をまるでギャンブルのように運に委ねることになってしまう
この記事で理解できること
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なぜESAT-J(もしくは英語学力検査)の得点が高いことが原因で合格から不合格に逆転するのか
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具体例2点の発生条件、逆転の流れ
年が明けて本格的な受験シーズンが到来しました。今回の2023年度 都立高校入試の合否判定に活用される英語スピーキングテスト「ESAT-J」には、入試の公平性や公共事業の透明性の観点で重大な問題が多々あることを繰り返し伝えてきました。
*問題の全体像は昨年11月30日に配信済みの下記ニュースレターを参照ください
これまでESAT-Jに反対してきた受験生や保護者の方々であっても、1月12日から順次発表された自らのESAT-Jスコアが良かった場合、「スコアが良かったので、やっぱり合否判定に活用してほしい」と思い直した方もいると思います。しかし、その高得点が自らを不合格圏に落とす可能性があることはご存知でしょうか?
そこで今回のニュースレターでは、最も深刻な問題である「逆転現象」(受験生の実力と無関係な形で、ESAT-Jスコアによって合格者と不合格者が逆転)に絞って、自らの高得点が原因で合格圏から不合格圏に落ちるカラクリを具体例2点と共に紹介していきます。
注意事項
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公式見解の用語を一字一句正確に伝えることよりも、当事者である中学生がポイントを理解できることを最優先します。具体的には、東京都の公式説明は非常に難解な言葉を多用しているため、ニュアンスに致命的な違いが生じない範囲で用語やパターン分けは可能な限り易しく置き換えます
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もし途中で「難しい」と感じた場合は一気に読み飛ばして、中盤以降の2つの具体例から読んでも大丈夫です!
逆転現象の流れ
まず、逆転現象が発生する流れを3段階に分けて図解したのが、こちらのスライドです。
ざっくりと結論を先にお伝えすると、「不確かな基準を物差しに、不受験者の得点を無理やり推定するので、高校合否が運に左右されてしまう」と言えます。
©️2023 Jun Inukai
様々な問題が複雑に絡み合うため、スライドで指摘した主な問題(①〜⑩)を順に説明していきます。
第1段階 ESAT-J 受験者の得点算出
まず、問題点①〜④に示した通り、ESAT-Jは公平性が全く担保されていないため、本来の実力と異なる得点が出やすいです。
*原因となる問題は他にも多数(採点基準が不透明、学習指導要領の逸脱 等)あるが、今回は受験生本人が実感しやすい問題として①~④を抜粋
*各問題の詳細や全体像は配信済みのニュースレター「高校入試の「公平性」を破壊するESAT-J 問題の全体像」 参照、試験当日のトラブルに特化した詳細は同様に「【現場リポート】ESAT-J実施状況調査の報告記者会見」 参照
さらに、問題点⑤で示したように配点の換算が歪(いびつ)です。具体的には、ESAT-Jは100点満点にもかかわらず、6段階のグレード(A~F)で4点刻み(20点、16点、12点、8点、4点、0点)に換算して配点します。
ESAT-J GRADE 各レベルのCan-Do Statements
*グレードをめぐる問題の詳細は、Imidas「都立高入試英語スピーキングテスト「20点」の謎 〜配点も点数も全てが不可解」(2022年2月16日 大内裕和氏) 参照
つまり、第1段階(ESAT-J 受験者の得点算出)の時点で既に、得点に実力が正しく反映されていないと言えます。
第2段階 ESAT-J 不受験者の得点推定
問題点⑥で示した通り、東京都の公立中学3年生向け試験であるESAT-Jを無理やり都立高校の入試に活用しているため、ESAT-Jには一定数の不受験者が必ず存在します。
(例)都外在住で都立高志望、都内在住で国私立中学在籍で都立高志望、等
そして、問題点⑦で示した通り、試験当日(昨年11月27日)と予備日(昨年12月18日)の欠席者に加えて、制度欠陥を理由に必ず存在する不受験者たちについては、英語学力検査の得点が近い者の平均値から推定するという信じ難い手法を採用しているのです。これが、「逆転現象」を招く最大の要因です。
得点推定の具体的方法は5パターンがあります。東京都の公式説明に従って、パターンの分岐条件、平均値の集計範囲、筆者の懸念点をこちらのスライドに整理しました。
©️2023 Jun Inukai
大前提として、この得点推定の集計範囲に含まれるのは、同じ志望校の受験生同士です。正確な人数は高校毎に異なりますが、おおむね100〜300人です。
従って、100点満点の英語学力検査で同点が10名以上いない場合は普通に起こり得るため、不受験者が最高点もしくは最低点付近でない限りは、パターン2(集計範囲が上下各5名以上になるように英語学力検査得点を上下それぞれ1点間隔で拡大)の推定方法が一般的になると予想されます。
上下1点間隔で集計範囲を拡大していくため、集計範囲の人数は上下で等しいとは限りません。もし上が多ければ高い点になりやすい可能性があり、逆に下が多ければ低い点になりやすい可能性があります。どちらが多くなるかは完全に運です。
さらに、不受験者より英語学力検査得点が高い(もしくは低い)者が5名未満(=不受験者が最高点もしくは最低点付近)の場合、 パターン4(集計範囲が10名以上になるように英語学力検査得点を上もしくは下に1点間隔で拡大)となります。最高点付近の場合は集計範囲に自身より得点の低い者の比率が増え(=実力より低い点になりやすい可能性がある)、最低点付近の場合は集計範囲に自身より得点の高い者の比率が増える(=実力より高い点になりやすい可能性がある)ことになります
ただ、先に説明した通り、そもそもESAT-Jは公平性が担保されていません。不受験者の得点を英語学力検査が同じ(近い)者から推定する考え方の根底には、「英語学力検査の得点が高い者はESAT-Jの得点も高いはず」という前提があるのでしょうが、その前提は既に崩れているのです。そのため、たとえ英語学力検査の得点が同じ者のみを集計範囲とするパターン1であっても、得点推定の基準としての信頼性が低いという問題を抱えます。
また、ESAT-J受験者が10名未満と非常に特殊(志願者が少ない高校で、不受験者が多数発生した場合を想定したと見られる)なパターン5では、都の公式説明ですら「集計が可能な人数を集計する範囲として定める」という意味不明な説明のため、詳細不明です。以下の図表とあわせて考えれば、同一志望校のESAT-J受験者全体を集計範囲とするようですが、英語学力検査得点等の配慮は一切無くなるため、完全な運で得点を推定することになります。
つまり、第2段階(ESAT-J 不受験者の得点推定)では、不受験者の得点は運の要素が大きいと言えます。そして、5つのパターンのどれになるかによって、運の要素の大きさは変動します。
第3段階 高校入試の合否判定
最終的な合否決定は1020点満点の総合得点(学力検査700点+調査書300点+ESAT-J20点)で決まります。細かい内訳は以下の通りです。
問題点⑧で示した通り、総合得点(学力検査700点+調査書300点+ESAT-J20点)で3点以内の差はESAT-Jのグレード1段階(4点)の差で逆転されます。同様に7点以内の差は2段階(8点)、11点以内の差は3段階(12点)、15点以内の差は4段階(16点)、19点以内の差は5段階(20点)の差で逆転可能です。
また、学力検査の500点(100点×5教科)は1.4倍して700点に換算されています。一方、ESAT-Jは問題点⑤でも紹介した通り、6段階のグレード(A~F)で4点刻み(20点、16点、12点、8点、4点、0点)に換算されます。
整理すると、最終的な合否を決定する1020点満点の総合得点において、両者は以下のような大小関係にあるのです。
学力検査の1点(=1.4倍換算して1.4点) < ESAT-Jの1グレード(=4点)
学力検査の2点(=1.4倍換算して2.8点) < ESAT-Jの1グレード(=4点)
学力検査の3点(=1.4倍換算して4.2点) > ESAT-Jの1グレード(=4点)
つまり、たとえ学力検査が1〜2点下がったとしても、ESAT-Jのグレードを1つ上げた方が合格に近づくとも言えます。これが、後ほど説明する逆転現象の具体例で大きな意味を持ちます。
その結果、問題点⑨として最終的な高校合否が運に左右されることになります。自らのESAT-Jや英語学力検査の高得点が原因で合格圏から不合格圏に落ちることが起こり得るのです。
さらに、救いようのないことに問題点⑩として、逆転現象が原因で自分が不合格になっても確かめる方法は無いのです。なぜならば、開示請求対象は自身の得点や答案コピーのみ。この逆転現象を検証するために不可欠な他人の得点に関する情報は開示請求できないからです。さらに言えば、後ほど具体例で紹介する逆転現象の複雑さを踏まえれば、合否判定に人為的ミスが発生する可能性も十分ありますが、同様の理由でそれを確かめる方法も無いのです。
改めて、冒頭に示した逆転現象が発生する流れのスライドを再掲します。
©️2023 Jun Inukai
「不確かな基準を物差しに、不受験者の得点を無理やり推定するので、高校合否が運に左右されてしまう」と言えるでしょう。
前置きが大変長くなりましたが、具体例が無いとイメージが湧きにくいと思いますので、これから2つの具体例でさらに詳しく説明します。
具体例1 〜ESAT-J高得点が自らを不合格圏に落とす〜
1つ目の具体例は、ESAT-Jスコアが良かったと喜んでいる受験生・保護者の方々には特によく読んで頂きたい内容です。
2人の受験生(佐藤一郎、鈴木二郎)に着目し、以下の前提条件で進めていきます。
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佐藤一郎はESAT-Jを受験、鈴木二郎はESAT-Jを不受験
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両者は同じ志望校の合否ボーダーライン上。ESAT-Jを除く総合得点(学力調査700点+調査書300点)はわずか3点差
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志望校の合格ラインは上位200名までと仮定
* 実際は全ての受験生が関与するため逆転現象はさらに複雑に発生するが、問題を単純化するため今回は2名(佐藤一郎、鈴木二郎)に着目。その他の条件も適宜 簡略化
©️2023 Jun Inukai
スライドの内容を順を追って説明していきます。
第1段階 ESAT-J 受験者(佐藤)の得点算出
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佐藤一郎はESAT-Jでほとんど回答できなかったのになぜかB判定(16点)。本人は「ラッキー!」と大喜び
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予想外の高得点の理由は、タブレットが別人の回答を誤って録音した、採点基準が曖昧だった、等が考えられるが本人には確かめようもない
第2段階 ESAT-J 不受験者(鈴木)の得点推定
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ESAT-Jの不受験者である鈴木二郎は英語学力検査では80点
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同一志望校の受験生で80点は10人未満のため、パターン2(上下各5名以上になるように英語学力検査得点を上下それぞれ1点間隔で拡大)でESAT-Jの得点を推定
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結果、[A(20点)×6人+B(16点)×3人+C(12点)×1人] ÷10 =18となり、A判定(平均値18以上)の水準をギリギリでクリアし、20点を得る。
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ちなみに、もし集計対象に含まれている佐藤一郎のグレードが1段階下(B→C)だった場合、平均値は18を下回るため鈴木二郎はB判定(16点)となり得点は一気に4点も下がることになる
第3段階 高校入試の合否判定
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ESAT-J反映前の総合得点(学力調査700点+調査書300点)では、佐藤一郎が3点差で鈴木二郎を上回っていた
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しかし、ESAT-J反映後の総合得点(学力調査700点+調査書300点+ESAT-J20点)では、佐藤一郎が引き上げてくれたESAT-J得点(4点分)のおかげで、鈴木二郎は3点差を逆転して合格
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一方、佐藤一郎は自らのESAT-J得点で鈴木二郎の得点を押し上げたため、不合格に転落してしまう。
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佐藤一郎はESAT-Jの入試活用が無ければ、鈴木二郎に3点差をつけたまま合格圏に残っていた
当然ながら この具体例はこうした結論になるように諸条件を調整したものですが、3万人以上が受験する都立高校入試において、このようなケースが発生する可能性は十分あります。
ただし、この具体例1はESAT-Jの入試活用を「する場合」と「しない場合」を比較したことで浮き彫りになった逆転現象です。つまり、仮にESAT-Jの入試活用が完全決定して覆せない状況であれば、「逆転」とは言い切れないケースです。
*佐藤一郎のESAT-Jが1段階下(B→C)の場合、佐藤一郎と鈴木二郎の両名がともに1グレード分(4点)を失い、ともに不合格圏に落ちるため。
ところが、次に紹介する具体例2はさらに深刻です。仮にESAT-Jの入試活用が完全決定して覆せない状況であったとしても「逆転」が発生しているからです。
具体例2 〜学力検査の高得点が自らを不合格圏に落とす〜
2つ目の具体例は、2月21日に予定されている学力検査で1点でも高い点をとろうと受験勉強を頑張っている中学3年生の皆さんによく読んで頂きたい内容です。なぜならば、1問でも多く正解しようと頑張って積み上げた学力検査の1点(もしくは2点)が、自らを不合格圏に落とすことがあり得るからです。
今回は1人の受験生(田中三郎)に着目し、以下の前提条件で進めていきます。
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田中三郎はESAT-Jを不受験
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志望校の合格ラインは上位200名までと仮定
* 実際は全ての受験生が関与するため逆転現象はさらに複雑に発生するが、問題を単純化
©️2023 Jun Inukai
スライドの内容を順を追って説明していきます。
第2段階 ESAT-J 不受験者(田中)の得点推定
英語学力検査が90点の場合
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同一志望校の受験生で90点は10人未満のため、パターン2( 上下各5名以上になるように英語学力検査得点を上下それぞれ1点間隔で拡大)でESAT-Jの得点を推定
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結果、[A(20点)×5人+B(16点)×4人+C(12点)×1人]÷10=17.6となり、B判定(16点)。92点の受験生のC判定が足を引っ張って、A判定(平均値18以上)の水準にギリギリ届かないため
英語学力検査が89点の場合
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同様にパターン2( 上下各5名以上になるように英語学力検査得点を上下それぞれ1点間隔で拡大)でESAT-Jの得点を推定
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結果、[A(20点)×6人+B(16点)×4人+C(12点)×0人]÷10=18.4となり、A判定(20点)。92点の受験生(C判定)の代わりに87点の受験生(A判定)が集計範囲に入ったことで平均値が上がり、A判定(平均値18以上)の水準を満たしたため
第3段階 高校入試の合否判定
英語学力検査が90点の場合
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ESAT-J反映前の総合得点(学力調査700点+調査書300点)では、3点差以内で上回っていた3名(730〜732点の各1名ずつ)に逆転され、田中三郎は不合格に転落してしまう
英語学力検査が89点の場合
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ESAT-J反映前の総合得点では田中三郎は英語学力検査が1点低くなるため、1.4倍換算で1.4点低くなる(733点→731.6点)
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しかし、田中三郎はESAT-Jが1グレード(B→A)上がることで4点(16点→20点)の上積みになるため、ESAT-J反映後の総合得点では2.6点(= 4点 - 1.4点)の上積みとなり、逆転で合格となる
このケースでは、受験生全員の総合得点が明らかになった合否判定の段階に初めて「田中三郎は英語学力検査で90点ではなく89点をとった方が合格確率が上がる」と分かりますが、当然ながら学力検査の時点で予知することは不可能です。完全に運任せなのです。
この逆転現象は、「英語学力検査で1点でも多くとろう」と頑張る受験生に対して、「もしかしたら1〜2点であれば、むしろ低い点数をとった方が合否判定で有利に働くかもしれない」という可能性を感じさせてしまっています。これだけでも入試制度の根幹を揺るがす致命的欠陥です。
また、2つ目の具体例もこうした結論になるように諸条件を調整したものですが、3万人超が受験する都立高校入試において、このように完全な運で合否が逆転するケースが発生する可能性は十分にあります。なぜならば、先に説明した通り、ESAT-Jは公平性が担保されておらず、「英語学力検査の得点が高い者はESAT-Jの得点も高いはず」という推定の大前提は既に崩れているからです。英語学力検査とESAT-Jの得点に相関がほとんど見られずにバラバラに分布する事態が十分に予想されます。そうなれば英語学力検査が1点(=1.4倍換算後は1.4点相当)高かったために、ESAT-Jのグレードが一気に2段階(8点)や3段階(12点)下落することもあり得ます。
そして、この具体例2は条件を全て逆にすれば、逆の結果(英語学力検査の低得点が自らを合格圏に引き上げる)もあり得るのです。とにかく、全てが運任せです。
今回は具体例の紹介は2点にとどめましたが、逆転が発生するケースはまだまだあるはずです。
ESAT-Jを受けた方が良いのか。はたまた受けない方が良いのか。
英語学力検査では高い点をとった方が良いのか。はたまた(1〜2点までであれば)むしろ低い点をとった方が良いのか。
それすらも、受験生全員の総合得点が明らかになった合否判定段階にならないと誰にも分からない。
これは、もはや「入試」ではなく「運任せのギャンブル」です。
「試験で頑張れば合格に近づく」という入試の大原則を完全にぶち壊しています。
それにもかかわらず、逆転現象が原因で自分が不合格になっても確かめる方法は無いのです。
完全なブラックボックスです。
ESAT-Jの入試活用を中止させるために
ここまでお読み頂ければ、他の数えきれない問題(前半組音声の漏洩、GTECに酷似、スタートを遅らせばカンニング可能、タブレットが別人の声を誤録音、配点が歪、学習指導要領の逸脱、採点基準が不透明、試験監督の採用条件が甘い、ベネッセへの利益誘導)の全てに目をつむったとしても、この「逆転現象」1つだけで英語スピーキングテスト(ESAT-J)は高校入試に絶対に活用してはいけないとお分かり頂けたのではないでしょうか。
この機会に、ESAT-Jの高校入試活用を止めるために読者の皆様に何ができるのかを紹介します。
ESAT-J受験者(主に東京都の公立中学3年生)と保護者の場合
昨年11月27日(もしくは12月18日の予備日)にESAT-Jを受験した東京都の公立中学3年生とその保護者の皆さんは、中止に向けて最も大きな鍵を握っていると言えます。ESAT-Jを入試判定に活用して欲しくない気持ちがあれば、以下のアクションを実行してください。
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自らの中学校に対して「試験当日の解答に影響するトラブル」を具体的に伝える
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伝えた内容は証拠(メモ、メール、録音 等)に残しておく
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伝えた内容は、区や市町村の教育委員会を通して東京都教育委員会に報告してもらうことを自らの中学校にあわせて依頼する
今まさに受験勉強のラストスパートに入っている中で心苦しいですが、報告手段をあえて用意しないことで「解答に影響するトラブルは無かった」と言い張る小池百合子都知事と東京都教育委員会の態度を変えるには、もうこれしかないように思います。
さらに余裕がある場合は、その証拠をメディアやESAT-Jに反対する都議会の議員や区議会の議員に伝えることで効果は倍増するでしょう。詳しい方法は、羽藤由美氏の以下の連続ツイートを参考にして下さい。
東京都のスピーキングテストESAT-Jを受験した中3生と保護者の皆さんへ
1/12に発表された成績に納得しましたか? 昨年11/27の試験実施日にあれほどズタズタ・ガバガバなテスト運営をしたベネッセがまともに採点したと思いますか? この成績が都立高校入試に使われても構いませんか?→
ESAT-J受験者以外の場合
今年度にESAT-Jを受験していない方々にもできることはあります。最もハードルの低い方法として、2つのオンラインでの反対署名をご紹介します。
東京都での実績が既成事実化すれば、営利企業であるベネッセが他県に横展開することは必至です。将来的には東京だけでなく日本全国の中学生、保護者、教育関係者が同様の被害を受ける可能性があります。
また、(現時点では考えたくはありませんが)もし今年はESAT-Jの都立高校入試活用を止められなかったとしても、せめて来年(現 中学2年生の高校入試)は中止できるように東京でも引き続き反対運動は続ける必要があります。
まとめ(この記事で理解できたこと)
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ESAT-Jの「逆転現象」は、この1点に限っても高校入試には絶対に活用してはいけない代物であることを証明している。この逆転現象によって、公平であるべき入試が「運任せのギャンブル」に成り下がる。
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自らのESAT-Jの得点が高いことが原因で、他者のESAT-Jグレードを1段階(4点)上げて総合得点の3点差を逆転され、合格から不合格に転落する可能性がある
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自らの英語学力検査の得点が高いことが原因で、ESAT-J得点推定で平均値が低い集計範囲に移動してしまい、自らのESAT-Jグレードが1段階(4点)下がり、合格から不合格に転落する可能性がある
今回のニュースレター本編は以上です。
問題の深刻さに気づいていない方々(特に中学生・保護者)に1人でも多く届くことを願って、今回のニュースレターは執筆にかけた多大な労力を完全無視して、全編を無料公開しました。
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2022年1月27日 犬飼淳
参考
▼逆転現象シミュレーションの解説動画(2023年1月 松井孝志氏)
*前後編あわせて約27分で視聴可能
▼配点(6段階グレード、4点刻み)をめぐる問題の詳細(2022年2月16日 大内裕和氏)
関連ニュースレター
▼問題の全体像(2022年11月30日)
▼受験生・保護者の声に焦点を当てた、記者会見リポート(2022年12月6日)
▼試験監督の声に焦点を当てた、記者会見リポート(2022年12月10日)
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