偽りの対立軸「オールドメディア vs SNS」の起源

都知事選や兵庫県知事選の意外な結果を受けて2024年後半から突如広まった「オールドメディア」という表現。直近15年の定義の変遷を辿りながら、新聞・テレビを軽視してSNSを過度に持ち上げる風潮が一種のプロパガンダとなっている一面を指摘します。
犬飼淳 2025.06.08
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この記事を書いた理由

  • 信頼性・影響力低下のニュアンスも込めて新聞・テレビを「オールドメディア」と呼ぶ一方、SNSを過度に持ち上げる風潮が2024年後半から急速に広がっている

  • しかし、当然ながらSNS上の情報はまさに玉石混交のため、過度な信用は民主主義をさらに壊す恐れがある

この記事で理解できること(冒頭)

  • 「オールドメディア」という表現自体が一種のプロパガンダとなり、選挙結果を歪めている恐れがあること

この記事で理解できること(本編)

  • 「オールドメディア」という表現の直近15年間(2010~2024年)の定義の変遷

  • 4つのフェーズを経て、現在の定義と対立軸が浸透した過程

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今回は、ある時期から突如として広まった「オールドメディア」という言葉に着目し、その起源を辿ります。

まず、この言葉が急速に広まったのは昨年(2024年)後半。7月の都知事選、11月の兵庫県知事選がいずれも予想外の結果に終わったことを受けて、信頼性・影響力低下のニュアンスも込めて新聞・テレビを「オールドメディア」と呼ぶ風潮が一気に広まりました。一方、SNSは両選挙の意外な結果の要因として過度に持ち上げられるようになりました。しかし、そもそも筆者はこの見立てに疑義があります。

まず、都知事選については、当選した現職(小池百合子氏)を持ち上げるプロパガンダを選挙前に徹底的に流したのはテレビ各局でしたから、選挙結果に依然として(悪い意味で)多大な影響を与えたことは明白。

2位に躍進した石丸伸二氏についても、その成功要因を「SNS」と雑に総括する論調が都知事選直後は非常に多かったですが、その後徐々に明らかになってきた通り、実態は組織力・資金力を最大限活用した極めて古典的な選挙運動を展開しており、SNSはあくまでもその一部に過ぎませんでした。

兵庫県知事選についてもSNS戦略は勝因の一つだったでしょうが、選挙直後に発覚した通りPR会社は極めて違法性の高い手法に手を染めていましたし、貢献度では立花孝志氏による2馬力選挙の方が大きかったでしょう。さらに言えば、在阪準キー局はサクラや仕込みを用いたと判断せざるを得ない映像で現職のイメージアップを図っていたことも周知の通りです。

こうした実態を無視して「SNSの勝利、オールドメディアの敗北」と両選挙を総括することは危険です。まず、第2次安倍政権以降、新聞・テレビの質が著しく下がったことは筆者も同意見ですし、このニュースレターでも継続的に指摘してきました。とはいえ、当然ながらSNSはさらに玉石混交。新聞・テレビならば当然存在するクレームの窓口すら無ければ、明らかに誤っていても訂正に応じないことも多いです。つまり、場合によってはさらに質が低いものがなぜか持ち上げられているという奇妙な状況です。

現に、両選挙ではSNSの不正確な情報が選挙結果に多大な悪影響を与えました。

(例)実際は的外れな石丸伸二氏の主張をあたかも有能なように見せかけた切り抜き動画、「斎藤元彦氏は陥れられた」等の動画

従って、筆者が両選挙を総括するならば、決して「SNSの勝利」などではなく「誤情報の拡散に訂正が追い付かず、選挙結果が歪められた」に過ぎません。その誤情報の発信元はテレビの場合もあればSNSの場合もありましたが、SNSに過度に注目が集まっただけのことです。こうした現状で新聞・テレビを「オールドメディア」と安易に見下して「新聞・テレビ vs SNS」という不正確な対立軸を持ち出すことはプロパガンダへの加担になりかねません。本当の対立軸は「誤情報を拡散する側 vs 訂正する側」なのですから。

そこで、これ以降の本編では「オールドメディア」という言葉の直近15年間定義の変遷を振り返りながら、このプロパガンダの起源を探ります。

©️2025 Jun Inukai *詳細は<b>本編</b>で説明

©️2025 Jun Inukai *詳細は本編で説明

本編の目次

  • 全体像

  • フェーズ1(2010~2013年)

  • フェーズ2(2014~2016年)

  • フェーズ3(2017~2023年)

  • フェーズ4(2024年)

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