【独自】「東大が学費を上げても他大学に波及しない」と本気で東京大学は考えていたのか

全国の国公立・私立大学で着実に広がる学費値上げ。その火付け役を担った東京大学 藤井輝夫総長の現在の認識を確認しました。
犬飼淳 2025.09.25
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この記事を書いた理由

  • 事前に誰もが懸念した通り、東京大学を震源とする学費値上げの動きが国公立大学・私立大学へ次々と波及している

  • こうした悪影響の大きさを見越して学生たちは拙速な学費値上げに反対していたにもかかわらず、「財務諸表に基づいた合理的説明」も「学生との対面での対話」も拒否して値上げを強行した東京大学の責任は改めて重い

この記事で理解できること

  • 約1年前に他大学への学費値上げ波及を楽観論で否定した東京大学(藤井輝夫総長)の現在認識の確認結果

  • 質問状対応で改めて露呈した東京大学の閉鎖性

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2024年9月24日に東京大学が学費値上げを発表してから丸1年が経過しました。多くの学生や識者が懸念した通り、この1年間で学費値上げの動きは国公立大学だけではなく私立大学にも以下の通り拡大。

  • 2024年11月 中央大学が入試要項を通じて値上げ決定を事実上発表

  • 2025年4月 明治大学が値上げ決定を発表

  • 同年5月 名古屋工業大学が値上げ検討を発表

  • 同年8月 埼玉大学が値上げ検討を発表

そもそも東京大学が学費を上げれば他大学に波及することは歴史が証明済み。だからこそ東大生の一部は「東大だけではなく大学全体の問題になる」という危機感に基づき、拙速な学費値上げに疑問や反対の声を挙げたわけです。

しかし、こうした当たり前の懸念への大学側の反応は余りにも楽観的かつ的外れでした。最たる例が、2024年6月の総長対話での以下のやり取りです。

*総長対話:学費値上げ前に学生が総長に質問が許された唯一のイベント。開催形式は学生側が求めた対面ではなくオンライン(zoom)、指名されて発言できた学生は僅か13名

【学部生 5人目】今回の学費値上げの目的の中にダイバーシティー&インクルージョンを含めていましたが、その目的のために現在すでに大きく偏っている学生構成をさらに偏らせて構造的差別を助長するのは本末転倒ではないでしょうか。あと、東大の値上げが他の国立大学にも波及する恐れが高いので、これから学生になる全ての人に与える影響についてもお考えをお聞きしたいです。

【藤井輝夫 総長】構造的差別については、そのようなことが起きないようにしなければならない。(中略)他大学への影響については、大学ごとに教育環境、財務状況は異なるので、各大学が説明責任を果たす必要があります。東京大学が上げたからといって、すぐに「我々も上げます」とはならないと考えています。

*パブリックビューイング会場ではすぐさま学生たちから「そんなわけないだろー!」等と怒号が飛ぶ
2024年6月21日 東京大学 総長対話

実際は、前述した通り東京大学が上げたら次々と「我々も上げます」となったわけですから、この見通しは非常に甘かったと言わざるを得ません。

さらに言えば、筆者が財務諸表を精査した結果、近年値上げした他大学と比較して東京大学の財政は極めて健全値上げを急ぐ必要はそもそも無かったという結論に達しています。運営費交付金や私学助成金の減額で大学経営の厳しさが増し、値上げの必要性が高まる大学が多いことは事実ですが、少なくとも東京大学には当てはまらなかったのです。これは、大学側が頑なに「財務諸表に基づいた合理的説明」や「学生との対面での対話」を拒んだ事実とも一致します。

学費値上げ検討発覚の約半年前(2023年12月)に強行採決された国立大学法人法改正の経緯も踏まれば、政府や文科省が近年「稼げる大学」化を強力に推し進める中、国内で最も影響力の大きい東京大学には学費値上げを全大学に波及させる起爆剤の役割が現政権から期待され、大学側が従順に従ったと考えるのが自然です。筆者はこうした問題意識に基づいて、東京大学 藤井総長の現在の認識を質問状等を通じて確認。これ以降の本編では、その顛末をご紹介します。

本編の目次

  • 質問状 ~藤井総長は今もなお「東大が学費を上げても他大学に波及しない」と本気で考えているのか~

  • 訪問結果 ~閉鎖性を象徴する、安田講堂での出来事~

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