東京大学の学費値上げは本当に必要?(2) 財務分析
*東京大学は経営協議会(9月18日)を経て9月中に学費値上げを正式発表する恐れが非常に高いため、結論は冒頭に記載して公開直後から無料読者にも公開します。
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この記事を書いた理由
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東京大学が学費を値上げすれば他大学に波及することは歴史的事実が証明しているため、学生を中心に大きな反対運動が起きている
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しかし、大学側は「財務諸表に基づいた合理的説明」も「学生との対面での対話」も拒否したまま、9月10日に改めて値上げ案を一方的に発表。値上げの既成事実化を図っている
この記事で分かること
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2つの観点(東京大学単体の直近5年間の経年比較、値上げ済みの国立大学との比較)による財務分析の結果、東京大学の財務状況は極めて健全であり学費値上げを急ぐ必要性は無いと考えられること
東京大学が9月10日に突如発表した学費値上げ案では増収分の使途に複数の不審点があり、学費値上げを急ぐ必要性に改めて疑問符が付いたことは以下の第1報(2024年9月12日配信)でお伝えしました。
ちなみに東京大学の財務諸表を確認すると、今回の学費値上げによる増収(2025年度見込み値:13.5億円)は、直近の経常収益(2023年度実績値:2680億円)のわずか0.5%。期待できる財務改善効果は極めて小さいです。
©️2024 Jun Inukai
そこで今回のニュースレターでは財務諸表をさらに詳細に読み込んで、より具体的かつ定量的に学費値上げの必要性を検証します。
先に結果をお伝えすると、以下の通りあらゆる観点で学費値上げを急ぐ必要性は無いという結論に達しました。
東京大学単体の経年比較結果の結論
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貸借対照表:国立大学の特性で政府資本金1兆円超を有するとはいえ、資産・負債・自己資本の構成はほぼ不変で安定
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損益計算書:当期総利益は常にプラス(=黒字)を維持
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財務指標:自己資本比率75%以上を維持するなど超安定経営
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大学側が値上げ理由に挙げた高騰中の費用:人件費は確かに微増傾向だが、財政の余裕を踏まれば値上げを急ぐほどのインパクトには程遠い。光熱費はそもそも継続的な上昇傾向を現時点では確認できないため、恒久的な値上げ理由に挙げること自体が不適当
値上げ済みの国立大学との比較結果の結論
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2019年度~2024年度にかけて値上げ済みの主な国立大学(東京工業大学、東京芸術大学、一橋大学、千葉大学、東京農工大学)は値上げ前に慢性的な赤字経営、短期的な支払能力への懸念など財務上の問題を確かに確認できる
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一方、東京大学はそのような問題は一切確認できない
これ以降の本編では、上記の結論に至るまでの検証結果をスライド(計15枚)中心に視覚的にご紹介します。
*全15枚のスライドは本編で紹介
本編の目次
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東京大学単体の経年比較結果
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値上げ済みの国立大学との比較結果