「オールナイト万博」プロパガンダの記録
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この記事を書いた理由
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大阪・関西万博で約3万人の帰宅困難者が発生した問題を「オールナイト万博」と表現する風潮が当日夜からSNSで急速に広がった
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こうしたポジティブな表現を関係者やメディアも多用したことで、根本的な問題が矮小化されてしまっている
この記事で理解できること
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プロパガンダの醸成には3つの方向性があったこと
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発生後12時間の推移が浮き彫りにした、拡散の全体像
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再入場を心から楽しんだ帰宅困難者によって自然発生的に拡散された面もありつつ、その拡散過程には明らかに人為的・不自然な痕跡を複数確認できること
ちょうど1週間前に当たる8月13日の夜(21時半頃)、関西・大阪万博(以降「大阪万博」)会場の夢洲への唯一の鉄道アクセスである大阪メトロが原因不明の停電で運転を見合わせ。結果、約3万人が帰宅難民化するトラブルが発生しました。会場への再入場者数を全く管理できていない様子の万博協会が公表しないため未だに正確な数は不明ですが、万博会場での野宿・雑魚寝を余儀なくされた来場客は相当数にのぼったはずです。
*西ゲートからのバス・タクシーは動いていたものの、東ゲート側への情報共有は不十分だった上に、着いたとしても大行列で乗れない人が多数。大阪メトロは夢洲駅(会場の最寄駅)から1駅先のコスモスクエア駅への折り返し運転を22時10分から再開したものの、同駅も人工島である咲洲のためその後の移動手段は限られる。そもそも、こうした情報のアナウンスも不十分だった上に、いったん万博会場に再入場したら出れないと係員に案内された来場客もいた
こうした事態を招いた万博協会の対応はハッキリ言って問題だらけでした。
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一部のパビリオンが開放されたものの、運転見合わせから約2時間も経過した後。しかも、なぜか吉村洋文大阪府知事は自らのX個人アカウントでパビリオン管理者に施設開放を呼びかけており、こうした緊急時の連絡方法さえ確立していなかったことが疑われる
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ペットボトルの水が配布されたものの、運転見合わせから実に6時間以上が経過した午前4時過ぎ。しかも、配布されたのは千本程度で会場内にとどまっていた帰宅困難者に対して圧倒的に少なかったと見られる
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万博協会からのアナウンスがあまりにも不十分な上に係員の対応もバラバラで、帰宅困難者たちは状況を把握することすら困難な状況にあった
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そもそも万博会場への鉄道網は大阪メトロ1本のみで来場客の7割が集中するため、運転停止時に大量の帰宅困難者が発生する脆弱性は以前から指摘されていたにもかかわらず、対応策を全く準備していなかった事実を上記の経緯が証明している
しかし、この状況を「オールナイト万博」という表現でポジティブに捉える投稿が当日深夜にSNSで発生。一夜明けた翌14日以降、本来はこの状況に責任を負うべき関係者もこの流れに便乗した内容を次々と投稿。

大変な状況にもかかわらず、忍耐強く過ごしてくださり、また時にポジティブに楽しく過ごしてくださった来場者の皆さん、ありがとうございました
*投稿者は大阪万博の会場デザインプロデューサー

*投稿者は大阪万博を推進した維新の地方議員
さらに、メディアも以下の通り不気味なほどに各社揃って「オールナイト万博」を見出しに採用して事態を矮小化。
大前提として、SNS投稿や上記報道からも伝わる通り、突然の再入場を心から喜んだ帰宅困難者は確かに存在したのでしょう。しかし、それは徹夜で楽しむ体力や時間的余裕があるごく一部(主に若者)に限定されたはず。子供を連れた親、高齢者、障がい者、翌日に仕事や予定があって当日中に絶対に帰る必要があった人にとっては、突然の屋外での野宿・雑魚寝は楽しさよりも苦痛・ストレスが圧倒的に上回ったことでしょう。現に、深夜になっても気温が29度を超えていたこともあり、翌朝までに熱中症等の症状で万博会場から救急搬送された来場客は36名。幸運なことに友人の車の出迎えで野宿を免れたにもかかわらず、当日の出来事をハッキリ「地獄」と表現した帰宅困難者も存在します。
本ニュースレターを長くお読み頂いている読者はご存知の通り、PCR検査(2020年2月~3月)やRシール(2024年7月)の件を始め、こうしたSNSを発信源とするプロパガンダ検証は筆者の注力テーマの一つ。筆者がこれまで取り扱った中では、悪意は無いSNS投稿を利用しつつ要所要所で方向性を歪めていた点で下記の能登半島地震の件が近いと感じています。
今回のニュースレターではこうした知見を生かしつつ、「オールナイト万博」プロパガンダの実態を定量的かつ視覚的に明らかにしていきます。

©️2025 Jun Inukai *詳細は本編で説明

©️2025 Jun Inukai *詳細は本編で説明

©️2025 Jun Inukai *詳細は本編で説明
本編の目次
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醸成の方向性3点
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時間ごとの推移 ~主催者側が仕組んだ一面が浮き彫りに~
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時間ごとの推移の別視点からの比較 ~爆発的な拡散の一方で失敗も~
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トレンドに残っていた誘導の痕跡 ~ある出来事を境に形勢逆転~
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相関関係が示す実態 ~一般アカウントの承認欲求を利用~
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