能登半島地震 被災地入りを拒む主張の記録

5W1Hによる混同を交えて「政治家やボランティアが来ると渋滞が悪化して被災地が迷惑する」と拡散した62アカウント。主張を15要素に分解し、2週間(2024年1月1日~14日)の主張内容、発信者、時期の偏りを定量的かつ視覚的に明らかにします。
犬飼淳 2024.01.23
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この記事を書いた理由

  • 能登半島地震はただでさえ初動が遅れて被害が拡大した上に、ある時期から「政治家やボランティアが来ると被災地が迷惑する」という趣旨の主張が爆発的に広がり、さらに事態を悪化させた

  • それらの主張は、コロナ禍の「無症状者を含む積極的なPCR検査が医療崩壊を招く」という主張を彷彿とさせるほど奇妙で不自然なものだった

この記事で理解できること

  • 被災地入りを拒む主張の拡散は、5W1Hによる自粛対象の混同で成立していたこと

  • 主張を構成する15点には、因果関係が全く成立していない内容も含まれていたこと

  • 主張の内容、時期、発信者には大きな偏りがあること

  • 主張を爆発的に拡散させる上で重要な役割を果たしたアカウントはどれか

***

1月1日に発生した能登半島地震では、ある時期から渋滞を理由に被災地入りを拒む主張が爆発的に増加しました。挙句の果てには「政治家は現地視察を自粛すべき」という理解に苦しむ主張までまかり通るようになり、誰もが被災地に行くことをためらう状況が生まれてしまいました。結果、人手不足を理由とした災害復旧の遅れが起きたことにとどまらず、被害が比較的軽微だった金沢市や加賀市などの観光地で客足が落ちるなど地元経済に深刻な悪影響を及ぼしました。しかし、冷静に振り返れば、「政治家やボランティアが来ると被災地が迷惑する」という趣旨の主張はそもそも意味不明で、これまでの災害ではほとんど聞いたこともない話です。

主張内容は荒唐無稽にもかかわらず、

影響力を持つアカウントを中心にある時期を境に爆発的に拡散され、

「数の暴力」によって主張内容が一定の正当性を得る。

そして、その不利益は全て一般市民が被る。

筆者はこの状況に「デジャブ」と呼べるほどの既視感を感じていました。コロナ禍の初期(2020年2月)に「無症状者を含む積極的なPCR検査が医療崩壊を招く」という主張が拡散された際の出来事とそっくりなのです。

*詳細は配信済みの以下ニュースレター(2021年9月5日公開)参照

この直感に従って同様の手法で今回の主張内容を分解・整理したところ、偶然とは思えないほどの共通点が複数見つかりました。

さらに、5W1Hによって自粛対象を混同させるという新たな手法も確認。

©️2024 Jun Inukai *詳細は本編で説明

©️2024 Jun Inukai *詳細は本編で説明

今回のニュースレターでは、「PCR検査をめぐる主張」で培った知見を活かしつつ、能登半島地震の被災地入りを拒む主張を多角的に検証したいと思います。具体的には、地震発生後2週間(2024年1月1日~14日)、5W1Hによる混同を交えつつ被災地入り自粛を要請した計62アカウントに着目。主張内容を15要素に分解し、あらゆる偏り視覚的かつ定量的に明らかにしていきます。

©️2024 Jun Inukai *詳細は本編で説明

©️2024 Jun Inukai *詳細は本編で説明

©️2024 Jun Inukai *詳細は本編で説明

©️2024 Jun Inukai *詳細は本編で説明

*通常のニュースレターよりも桁違いに長い(総文字数6万字超、スライド44枚)ため、まとまった時間がある時にお読み頂くことをおすすめします

本編の目次

  • 5W1Hによる混同のトリック

  • 主張15点の論理展開 ~因果関係すら成立せず、整合性がとれない主張が多数~

  • 主張内容の偏り ~特定の主張に大きく依存~

  • 時期の偏り ~あるタイミングで爆発的に増加~

  • 発信者の偏り ~特定の属性に集中~

  • 拡散の過程 ~情報の信頼性確保とミスリードを両立できた理由~

  • PCR検査をめぐる主張との共通点

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