【独自】インボイス導入根拠と益税の公開質問で浮き彫りになった、メディア各社の理解度(1)

なぜ大手メディアはインボイスの不正確な報道を繰り返すのか。そもそも自社も免税事業者との取引で問題の当事者になることを理解しているのか。大手メディア6社の公式見解を確認しました。
犬飼淳 2023.02.07
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この記事を書いた理由

  • インボイスは全ての国民が不利益を被る制度だという認識がなかなか広まらない

  • その最大のボトルネックは、政府の不正確な主張(インボイスには妥当な導入根拠がある、益税は存在する、等)を伝書鳩のように垂れ流し続ける大手メディアの存在である

この記事で理解できること

  • インボイスについて繰り返し報道してきた大手メディア6社が問題の大前提(自社も課税事業者として当事者になる、導入根拠の妥当性、益税の有無)をそもそも理解しているのか

  • 理解しているのであれば、なぜ不正確な報道を続けるのか

*今回はインボイス報道を例に深掘りするが、他のあらゆるテーマ(感染症対策、英語スピーキングテスト等)にも共通すると考えられる

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政府が2023年10月からの開始を目指すインボイス制度

不利益を一切被らない国民は誰一人として存在せず、(一般国民としては)百害あって一利なしの制度と断言できるため、「STOP!インボイス」を始め、多くの当事者がインボイス中止を求めてきました。

*被害の全体像は筆者がニュースレターで配信した「国民全員に悪影響が連鎖するインボイス。被害の全体像」参照

政府が主張する導入根拠(税率8%と10%の商品をまとめて10%で控除した事例があるため、インボイスは複数税率下での適正課税に必要)が真っ赤な嘘であることは国会質疑や筆者自らが質問した総理大臣記者会見で明らかになっています。

*昨年10月28日の首相会見で筆者が自らインボイスの導入根拠を岸田総理に質問し、根拠が無いことが改めて露呈した約3分間の質疑映像はYoutube参照

さらに、益税が存在するという主張(免税事業者は消費者が支払った消費税を国に納めずに利益としている)は裁判所の判例で明確に否定されています。

これだけの事実を積み上げているにもかかわらず、いわゆる大手メディア(テレビ局、全国紙・ブロック紙以上の新聞)は、政府の不正確な主張(インボイスには妥当な導入根拠がある、益税は存在する、等)を伝書鳩のように垂れ流し続け、国民が問題を正しく理解することを妨げ続けました

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大手メディアのインボイス報道例

そうした悪質な報道のごく一部を紹介します。

<導入根拠>

▼NHK(2022年9月14日):ホステスも問題の当事者であると伝えているものの、「インボイス制度は複数税率のもとで適正な課税を行うために必要」という不正確な政府主張を垂れ流し

▼朝日新聞 経済部 栗林史子、筒井竜平(2022年10月16日):「インボイス制度は複数税率のもとで適正な課税を行うために必要」という不正確な政府主張を垂れ流し

<益税>

▼東京新聞 河郷丈史(2021年10月21日):問題点も伝えているものの、記事末尾で「免税事業者は消費者が支払った消費税を国に納めず益税となっている」という認識誤りの財務省主張を垂れ流し

▼ABEMA(2022年12月14日): コメンテーターの神庭亮介氏(BuzzFeedJapan編集長)が「免税事業者には益税がある」という趣旨の認識誤りコメントを連発。MCの徳永有美氏も発言に同調したまま番組を進行。

*番組に出演協力した声優はインタビューで益税を明確に否定して詳しく説明したため、あまりにかけ離れた放送内容にブログで抗議する事態にまで発展

<その他の論点>

▼朝日新聞 東京社会部 原田悠自(2022年10月7日):インボイス登録率の分母と分子を異なる条件で計算。実態の「1割」よりはるかに高い「4割」に水増しして報道しており、捏造と呼んで差し支えないほどに悪質

*水増しのカラクリの詳細は筆者ツイート参照

特に朝日新聞は認識違いの記事の多さも悪質さも目に余るため、記者本人に認識を度々問い合わせてきましたが、これまで一度も反応はありませんでした。

  • 導入根拠があるという不正確な記事を書いた記者への問い合わせ

  • 登録率の水増し記事を書いた記者への問い合わせ 

ちなみに、こうした不正確な報道が繰り返される背景として、残念ながらメディア自身(特に幹部クラス)がインボイスや税の基本知識を欠いていることも関係すると見られます。

実際、インボイス導入後は自社も免税事業者との取引で当事者になることすらも未だに理解していないメディア関係者が度々 見受けられます。

***

公開質問状の内容

そこで、先ほど例示したように不正確な報道を繰り返してきた大手メディア6社(朝日新聞、ABEMA、NHK、東京新聞、日経新聞、毎日新聞)に対して、各社の公式見解を正式に問い合わせることにしました。

質問内容は大きく3項目に分けて、全11問。

  • 自社の免税事業者との取引について

  • インボイスの導入根拠について

  • 益税問題について

公開質問1〜5問目

公開質問1〜5問目

公開質問6〜11問目

公開質問6〜11問目

曖昧な回答は避けるため、全体的に選択式を多く採り入れ、自由記述では選択の根拠を具体的に説明して頂く流れにしています。

***

進め方

公開質問の送付は以下のような流れで進めました。

1月6日〜16日:回答確率を上げるため、事前に11日間かけて公開質問の送付先を6社に確認。

*ABEMA、東京新聞、毎日新聞は送付先の案内があったものの、残り3社(朝日新聞、NHK、日経新聞は問い合わせフォーム、電話、面識のある記者など八方手を尽くしても「一般の問い合わせフォームに送ってほしい。反応が無いならば、それが答え」という趣旨の反応しか得られず

1月17日:6社に一斉に公開質問を送付。回答期限は2週間後(1月31日)を指定。

*送付先を事前確認できなかった3社(朝日新聞、NHK、日経新聞)は一般の問い合わせフォームで連絡。文字数制限の関係で先ほど掲載した公開質問の文言を一部省略している場合あり

1月31日:回答締め切り

*6社中3社(ABEMA、東京新聞、毎日新聞)は回答あり

***

結局、質問送付先の事前確認にすら回答がなかった3社(朝日新聞、NHK、日経新聞)は最後まで一切の反応がありませんでした。「反応が無いならば、それが答え」ということでしょう。

また、反応があった残り3社(ABEMA、東京新聞、毎日新聞)にしても、全11問のうち回答があったのはごく一部。率直に言って、これまで導入根拠も益税もあたかも存在するかのような報道を繰り返したメディアとしては極めて無責任な内容でした。

また、意外に思われるかもしれませんが、本件ではABEMAと東京新聞の対応(無責任さ)は完全に同レベル毎日新聞に至っては、ABEMAよりも不誠実な対応でした。

これ以降、各社の回答結果に加えて、回答があまりにも不十分だったために各社と追加でやり取りした内容も公開していきます。

目次

  • 回答結果

  • ABEMAとのやり取り

  • 東京新聞とのやり取り

  • 毎日新聞とのやり取り

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