【兵庫県知事選2024】斎藤元彦氏再選を後押ししたYouTube動画の主張の記録
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この記事を書いた理由
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誤情報の爆発的拡散によって、明らかに問題のある候補者が当選してしまう事例が近年の首長選挙で相次いでいる。規制が緩いインターネット上の動画(YouTube、TikTok等)は誤情報拡散の温床となっている
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全国一斉に選挙が行われる国政選挙と異なり、1人の問題人物の擁護にリソースを集中できる首長選挙では、誤情報を訂正する側の対応にも限界がある。現に今年だけでも都知事選では小池百合子氏、兵庫県知事選では斎藤元彦氏の再選を許した
この記事で理解できること
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2024年の兵庫県知事選で斎藤元彦氏再選を後押ししたYouTube動画の主張構造27点、主に用いられた3つの詐術
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同動画のコメント欄には、動員による世論操作を示唆する分かりやすい特徴があること
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同動画では複数の「不正確な二項対立」が投票先誘導に巧妙に利用されたこと
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YouTube動画に限らず大半の報道において、「両論併記」が本来あるべき姿と大きくかけ離れていること
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問題人物の当選を防ぐには投票率向上に加えて、もう1つの条件があること
斎藤元彦氏がまさかの再選を果たした兵庫県知事選挙(2024年11月17日投開票)。不信任決議案に県議全86名が賛成して失職した直後という圧倒的不利な状況にもかかわらず、2位(稲村和美氏)に約14万票の大差をつけて圧勝。この選挙結果には筆者も非常に驚きました。
なぜ、政治家として明らかに不適格な問題人物が当選を果たしてしまったのか。
選挙3日後(11月20日)、PR会社の社長が公選法違反の自白に等しい内容を自ら公表するという、これまた前代未聞の珍事が発生して一気に世間の注目を集めましたが、このPR会社が担ったと見られるのはSNSを中心とする斎藤氏のイメージアップ戦略。当事者が正直に暴露してしまったから大問題となっているものの、残念ながら従来の選挙でも水面下では大なり小なり行われてきたことでもあり、奇跡的な再選の要因としては些細な話だと思います。
今回の選挙で従来と明らかに一線を画し、斎藤氏再選の重要な原動力となったのは、すでに多くの方々も指摘している通り、やはり以下2点ではないでしょうか。
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立花孝志氏が「斎藤氏応援のために立候補した」と公言して選挙戦を展開し、斎藤陣営は実質的に通常の2倍のリソース(選挙カー、ポスター、チラシ等)で選挙戦を戦えたこと *選挙区が比較的狭い衆院選(小選挙区)と異なり、知事選は選挙区が都道府県全体と広く選挙期間中にアプローチ可能な有権者は限定されるため、効力は非常に大きかったと考えられる
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インターネット上の動画(YouTube等)で斎藤氏再選を後押しする荒唐無稽(もしくは真偽不明)な内容(「斎藤元彦氏は陥れられた」「パワハラは無かった」「告発文書は嘘」等)が爆発的に拡散された
要は、ネットとリアルの両面で大きな要因が1つずつあったわけです。
1点目(リアル)は通常の2倍とはいえ物理的なリソースに由来するため効果に限度がありますが、2点目(ネット)は上手くハマれば効果は無限大。現に、数十万~数百万回もの再生数を稼いだ当該YouTube動画を多数確認でき、世論に与えた影響はとてつもなく大きかったことでしょう。
主張内容は荒唐無稽にもかかわらず、
ある時期を境に爆発的に拡散され、
「数の暴力」によって主張内容が一定の正当性を得る。
そして、その不利益は全て一般市民が被る。
この状況は、筆者が継続的に取り扱ってきた、X(旧Twitter)のポストによる異様なプロパガンダの拡散とよく似ています。
*これまでの主な分析結果は配信済みの以下ニュースレター参照
しかし、今回は喋り手に一定の技量さえあれば、根拠は乏しくてもトークの勢いで相手を騙せてしまう動画が非常に大きな役割を果たしたと筆者は理解しているため、従来通りにX(旧Twitter)のポストのみを分析対象にしていては実態を掴めません。そこで今回のニュースレターでは、これまで積み重ねた知見を応用し、斎藤氏再選を後押ししたYouTube動画を多角的・視覚的に検証します。具体的には、動画内の主張を27要素に分解し、どのような詐術を用いて市民を騙し、選挙結果を歪めたのかを明らかにします。
©️2024 Jun Inukai *詳細は本編で説明
©️2024 Jun Inukai *詳細は本編で説明
本編の目次
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主張の構造と用いられた詐術
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動員を示唆するコメント欄 ~正常値の10倍超を記録した比率~
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「不正確な二項対立」を巧妙に利用した投票先の誘導 ~「敵の敵は味方」理論~
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投票率が向上しても問題人物の当選を防げなかった背景 ~欠けていたもう1つの条件~
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今回も悪用された両論併記 ~インボイスや共同親権の報道を彷彿とさせる悪質さ~
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