【独自】東京都担当職員が初めて明かしたESAT-J平均点改ざん疑惑の認識

都立高入試に活用した英語スピーキングテスト(ESAT-J)の東京都教育委員会による平均点改竄疑惑。開示請求の文書交付(2023年8月21日)を通して、担当職員の認識を初めて確認できた結果をリポートします。
犬飼淳 2023.09.08
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この記事を書いた理由

  • 英語スピーキングテスト(ESAT-J)の都立高入試 合否判定への活用は、入試の公平性を破壊するほど多くの問題を抱えている

  • さらに、問題の一つである前半組から後半組への音漏れに関連して、入試の合否判定に影響する試験の平均点を、教育委員会が都合良く改竄した疑いが強い

  • この前代未聞の不祥事に対して、東京都はひたすら「時間稼ぎ」と「説明から逃げる」ことで今も隠蔽を続けている

この記事で理解できること

  • 半年以上も説明から逃げ続けた東京都職員の認識

  • 発端である8名の録音ミスの実態を東京都はどこまで正確に把握しているのか

  • いつも「席外し」のESAT-J担当者はいったい誰なのか

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2023年度都立高校入試の合否判定に活用されたESAT-Jをめぐって、入試の公平性や公共事業の透明性の観点で重大な問題が多々あったことは約9ヶ月にわたって繰り返しお伝えしてきました。

特に平均点や採点ミス(2月7日付で8名の採点を修正)をめぐっては、東京都はその場しのぎの嘘を繰り返したために自らの主張(報道発表、都議会答弁)で相互に矛盾する内容が多々発生。決定的な矛盾点や不審点が少なくとも7点もある異常事態となっています。

©️2023 Jun Inukai

©️2023 Jun Inukai

7点のうち④⑤⑥は、「小数点第3位を含む平均点」と、「採点を修正した8名受験回(本試験と追試験のどちらか、本試験であれば前半組と後半組のどちらか)」が明らかになれば、その矛盾はさらに浮き彫りになります。

④ 7万人弱が受験した試験の前後半の平均点が小数点第2位まで完全一致

⑤ 8人の採点修正で7万人弱が受験した試験の平均点 小数点第2位が変動

⑥都合よく「切り捨て」と「四捨五入」を使い分けたことを自白

この背景にあるのが、本試験当日に発生した前半組音声の後半組への音漏れです。

*そもそもの原因は、試験問題は同一にもかかわらず、タブレット台数の問題で前半組と後半組に分けて試験を実施したこと。「同一問題を同時刻に実施」という入試の基本に反する

さらに、前半組と後半組の教室が交互に配置されたため、「前半組の解答音声がハッキリ聞こえた」と証言する後半組の受験生が多数現れました。つまり、前半組の音声が後半組に流出し、後半組が有利になった可能性が高いのです。

その後、この問題に関連して、平均点をめぐって奇妙な出来事が続出します。

翌2023年2月2日、東京都は都議会で「本試験の前半組・後半組の平均点はともに60.77点」と答弁。7万人弱が受験した本試験の前後半の平均点が小数点第2位まで一致するのは不自然なため、「音漏れで後半組が有利な疑いを晴らすために平均点を改竄したのでは?」という疑念を生じさせました。

直後の2月7日、東京都は録音ミスによって 8名の採点修正を発表。翌々日(2月9日)の都議会では「8名の採点修正によって本試験前半の平均点は60.78点に変更した」と答弁。7万人弱が受験した本試験で、わずか8人の採点修正で平均点の小数点第2位が変動することは不自然なため、「平均点の小数点第2位までの一致に疑問の声が出たため、今度は採点修正に乗じて前後半の平均点が異なるように平均点を改竄したのでは?」という疑念を生じさせました。

©️2023 Jun Inukai

©️2023 Jun Inukai

つまり、自らの不手際を隠すために、入試の合否判定に影響する試験の平均点を、教育委員会都合良く繰り返し改竄したという前代未聞の不祥事が疑われているのです。

事態の深刻さを踏まえて、筆者は問題発覚直後の2月11日(8名の採点修正発表の4日後)、平均点に関する東京都への開示請求を開始。

しかし、これ以降、東京都はありとあらゆる手段を使って、ひらすら「時間稼ぎ」と「説明から逃げる」ことに没頭。

(例)あらゆる開示請求を「多忙」等の曖昧な理由で決定期限を60日に延長、担当部門にメールで問い合わせても一切回答しない、反応が無いためフロアを訪問しても「担当者は席外し」と繰り返す、まともな対応を期待できないため審査請求および取消訴訟に踏み切ると「今は訴訟中だから」という理由で一切のコメントを拒否する 等

そんな中、追加の開示請求に対して文書1枚の開示が決定。これまでの経緯を踏まえて、ESAT-J担当部門は必ず同席するように調整した結果、ついにESAT-J担当部門の職員と正式にアポをとった上で会うことが初めて実現しました。平均点改竄疑惑に関連して筆者がコンタクトを開始してから、実に半年以上を要したことになります。

*ESAT-J関連の東京都の記者会見は、事前に察知して自ら東京都に問い合わせても「レクであって会見ではない」等の理屈で東京都は参加を実質的に拒むため、参加できるのは都庁記者クラブのみ。詳細はtheletter「たった23日で証拠メールを廃棄する東京都」(2023年3月20日)参照

そして迎えた交付当日(2023年8月21日)、フリー犬飼がアポの時間に都庁を訪問すると、東京都 教育庁は以下の職員2名が応対。

  • グローバル人材育成部 国際教育企画課 鈴木沙織 課長代理 *ESAT-J担当部門

  • 総務部 総務課 藤原聖氏 *開示請求の窓口部門

2023年8月21日、都庁での交付時の映像。左から藤原聖氏、鈴木沙織課長代理。アクリル版に反射するのが交付を受ける筆者 *これまでの経緯を踏まえて交付時のやり取りは映像撮影

2023年8月21日、都庁での交付時の映像。左から藤原聖氏、鈴木沙織課長代理。アクリル版に反射するのが交付を受ける筆者 *これまでの経緯を踏まえて交付時のやり取りは映像撮影

当日は開示文書の基本的確認に加えて、関連して平均点改ざん疑惑や発端となった8名の採点ミスについても筆者は確認。しかし、取消訴訟で係争中であることを理由に都職員は大半の問題についてコメント自体を拒否。そのため、残念ながら新たに分かったことはごく僅かです。ただ、明らかに訴訟に無関係な超基本的な内容すらもロボットのようにコメントを拒否続ける姿勢を通して、とにかく「時間稼ぎ」と「説明から逃げる」ことに徹する東京都の異常性がさらに浮き彫りになりました。

今回のニュースレターでは、この約30分にわたった交付時のやり取りを詳細にリポートします。また、同時並行で進めている取消訴訟の最新状況もお伝えします。

本編の目次

  • アポをとって会うだけで半年を要した経緯

  • 真っ白な開示文書の交付

  • 8名の録音ミスが発覚して採点修正した経緯

  • 平均点改竄疑惑に対する東京都の認識

  • いったん回答を約束した後も4ヶ月以上放置した経緯

  • いつも「席外し」のESAT-J担当者は誰なのか

  • 7万人弱の平均点を紙と手計算で算出した?

  • 参考:自ら原告として東京都を提訴した関連訴訟の日程

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