所管のマイナ保険証トラブルを理解できていない河野太郎デジタル大臣

政府は2024年秋にマイナ保険証一体化(紙の保険証廃止)を決定。河野太郎デジタル大臣の発言に着目し、混迷を極めるマイナトラブルの実態を整理します。
犬飼淳 2024.01.11
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この記事を書いた理由

  • 紙の保険証廃止(マイナ保険証一体化の強制)は、国民皆保険を崩壊させるほどの制度欠陥を抱えている。さらに、窓口ではすでに深刻なトラブル(資格があるのに確認できず10割負担を求める等)が続出し、患者・医療機関は多大な不利益を被り続けている

  • 政府(特にデジタル庁)はトラブルは解決に向かっていると喧伝するが、その実態は問題のすり替えや矮小化に過ぎず、実際は全く解決していない。それどころか、2023年6月のマイナンバー情報総点検の開始後、新たな未知のトラブルまで発生し、事態は悪化の一途を辿っている

この記事で理解できること

  • 2023年12月21日のテレビ出演時の発言から判断して、河野太郎デジタル大臣はマイナ保険証トラブルの仕組みを全く理解しないまま不正確な情報発信を繰り返していること。あるいは、仕組みは理解しているが意図的に国民を騙そうとしていること

  • この事実は翌22日に全国保険医団体連合会(以降「保団連」)が緊急記者会見で資料を用いて解説したが、大手メディア(テレビ・新聞)はなぜか黙殺し、まだ広く知られていないこと

***

国民の圧倒的反対の声を完全無視し、政府は2024年12月に現行の紙の保険証を廃止することを2023年12月22日に一方的に閣議決定してしまいました。

*マイナ保険証(マイナンバー)の前提知識が無い場合は、配信済みの以下ニュースレターを適宜ご参照下さい

▼マイナンバーとマイナンバーカードの違い(2023年7月8日配信)

▼資格確認書送付の実現性(2023年8月7日配信)

特に、河野太郎デジタル大臣は今回の能登半島地震で通信や電力が途絶えた地域が多数あった地震3日後(1月4日)にマイナポータルを勧めるトンチンカンなツイートを行い、自らが所管のマイナンバー事業(マイナ保険証)の仕組みを理解できていない疑いが浮上。

河野太郎
@konotarogomame
能登半島地震において被災されたすべての方々に心よりお見舞いを申し上げます。
マイナンバーカードをお持ちの方は、スマートフォンからマイナポータルにログインすることで、御自身の過去の医療情報を確認し、普段飲んでいる薬の情報を避難所等で医師と共有することができます。
2024/01/04 11:41
4096Retweet 18598Likes
河野太郎
@konotarogomame
スマホにマイナンバーカードを搭載した方は、マイナンバーカードを読み取らなくてもマイナポータルから御自身の過去の医療情報にアクセスし、薬の情報を共有することができます。
2024/01/04 12:08
645Retweet 3054Likes

そもそも2023年6月のマイナンバー情報総点検本部立ち上げ時、岸田文雄総理は「国民の不安払拭」を紙の保険証廃止の条件に挙げていたはずです。しかし、保団連による「2023年10月1日以降のマイナ保険証トラブル調査 中間集計」(回答 医療機関6032件)では、従来の問題が解決するどころかむしろ新たなトラブルが発生し始め、マイナトラブルはもはや「底なし沼」と化していることが改めて浮き彫りになりました。

2023年12月20日 保団連 記者会見資料「10月1日以降のマイナ保険証 トラブル調査(中間集計)」 P4

2023年12月20日 保団連 記者会見資料「10月1日以降のマイナ保険証 トラブル調査(中間集計)」 P4

2023年12月20日 保団連 記者会見資料「10月1日以降のマイナ保険証 トラブル調査(中間集計)」 P5

2023年12月20日 保団連 記者会見資料「10月1日以降のマイナ保険証 トラブル調査(中間集計)」 P5

それにもかかわらず河野太郎デジタル大臣は2023年12月21日放送(閣議決定前日)の関西テレビ「newsランナー」への生出演時、保団連トラブル調査で特に数が多かった3点(名前や住所の黒丸表記、資格方法が無効、カードリーダーのエラー)について以下のように発言。これらは完全な認識誤りのオンパレードで、自らの所管でありながらトラブルの仕組みを理解すらできていないことが疑われます。

*トラブル3点の詳細は後述

これはエラーではありません。まず黒丸ですが、例えば「さいとうさん」の「さい」という字は何十種類もあります。コンピューターがハンドリングできる字体が限られていますので、それ以外のものがコンピューターでは一度黒丸で表示されます。それを直していただくことが行われているんで、トラブルではなく、そういう仕様になっています。

2つ目の資格情報は、働いている方が会社にマイナンバーを出して、会社からマイナンバーを登録していただくのですけれども、その登録を出していただけないと資格情報が無効になる。保険者にお願いをしていますけれども、なかなか出てこない場合については、今、個人に直接お伺いするということにしております。 

3つ目のカードリーダーでエラーが出るのは、病院でカードリーダーを置くときに後ろから光が差し込むような場所に置いてあると、顔が黒くなってしまうものですから、なかなか顔認証がしづらい。若干角度をずらしていただくと顔認証ができるようになりますので、この問題は現場でしっかり解消していただけるものだと思います」
河野太郎デジタル大臣発言(2023年12月21日放送  関西テレビ「newsランナー」) *太字は筆者判断(特に深刻な認識誤り)

これらは所管大臣としては看過できないほど不正確な情報発信のため、翌22日に保団連は緊急記者会見で資料を用いて具体的に反論。しかし、大手メディア(テレビ・新聞)はなぜか黙殺したため、今現在もまだ広く知られていません。

さらに言えば、河野太郎デジタル大臣は一昨年(2022年10月20日 参議院 予算委員会)の段階においても、紙の保険証廃止を勝手に宣言したり、厚労省と明らかに異なる解釈の答弁を行なった人物。独善的な言動には目に余るものがあり、1年以上にわたってマイナトラブルを泥沼化させてきた張本人と言えます。

そこで今回のニュースレターでは問題のテレビ出演時の発言に焦点を当てて、河野太郎デジタル大臣の情報発信のデタラメぶりを整理します。

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続きは、7081文字あります。
  • 河野太郎デジタル大臣発言の真偽
  • 黒丸はシステム間の文字コード違いによる根本的な問題
  • 「資格情報が無効」と「マイナンバー未提出」は全くの別問題
  • そもそも「なりすまし防止」が機能していない
  • 河野大臣の認識誤りを放置する大手メディアの奇妙な報道姿勢

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