役人の隠蔽(4)ESAT-J最大の問題「不受験者の得点推定」からあらゆる手段で逃げる東京都

役人がありえない理由で開示請求を無効化した実例を通して、情報隠蔽の手口を紹介するシリーズ。第4回は、都立高校入試に活用した英語スピーキングテスト(ESAT-J)の最大の問題「逆転現象」の原因である「不受験者の得点推定」を隠蔽する東京都教育委員会を紹介。
犬飼淳 2023.05.03
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この記事を書いた理由

  • 行政文書の開示請求は、国民の「知る権利」を守る重要な手段である。行政機関(官公庁、自治体 等)の情報公開の透明性が落ちた昨今、その重要性は一段と増している

  • しかし、あり得ない理由で開示請求を妨害する事例が後を絶たず、役人にとって不都合な情報は容易に隠蔽されている

この記事で理解できること

  • 都立高校入試に活用した英語スピーキングテスト(ESAT-J)の最大の問題「逆転現象」の原因である「不受験者の得点推定」に関わる情報の大半の開示を拒み、説明すらも拒否した東京都の「ありえない」対応

  • 都が非常識な言動を繰り返してまで情報を隠し、説明から逃げる姿勢から判断して、「不受験者の得点推定」は進め方すらも明かせないほど杜撰である疑いがさらに強まったこと

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「役人の隠蔽」に焦点を当てたシリーズ企画の第4回として、英語スピーキングテスト(ESAT-J)不受験者の得点推定を取り上げます。3月1日に合格発表を迎えた都立高校入試の合否判定に活用されたESAT-Jをめぐって、入試の公平性や公共事業の透明性の観点で重大な問題が多々あったことは約半年にわたって繰り返しお伝えしてきました。

その中でも最も深刻な問題は、「不受験者の得点推定」を原因とする「逆転現象」です。ざっくり説明すると、入試と異なる枠組み(都内の公立中学校在籍者向け)の試験を無理やり都立高入試に活用したために必ず「不受験者」(国私立中学在籍で都立高校志望 等)が存在するという制度欠陥を誤魔化すため、東京都は赤の他人(志望校が同じ受験生の中で英語学力検査の得点が近い者)の得点をもとに不受験者の得点を推定するという信じ難い手法を採用。「本人の試験結果をもとに合否を判定する」という入試の大原則から完全に逸脱しているのです。さらに、その推定方法は極めて不公平に設計されているため自らの高得点が原因で不合格圏に転落するパターンが複数存在します。

*逆転現象の仕組みの詳細は1月27日に公開した下記ニュースレターを参照ください

多くの教育関係者が問題点を指摘し続けましたが、東京都教育委員会は全く聞く耳を持たないまま入試を強行。さらに2月20日の学力検査直前期には2つの問題が新たに表面化しました。

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①推定方法の大前提が未だに不明

今現在(2023年5月)に至るまで、不受験者の得点推定の方法について東京都教育委員会が公表しているのは、昨年6月15日に公開した3ページの別紙資料「ESAT-J不受験者の主な扱いについて」のみ。リンク先をご覧いただければ分かる通り、この資料には都が想定する5パターンの極めて限定的な状況が例示されているのみ。

以下のような大前提すらも明記されていないので、これらを受験生・保護者は想像するしかないのです。

(1)集計対象は「全受験生」なのか「同一志望校の受験生」なのか

(2)得点推定を実施するのは「都教委」なのか「都立高校」なのか

(3)5つのパターンから成る複雑怪奇な得点推定業務をどのように遂行するのか。手計算なのか、専用のプログラムが用意されているのか。

(1)はパターン5(ESAT-J受験生が10名以上いないケース)が存在することから判断して後者、(2)については受験対応の実務から判断して後者と考えられますが、あくまでも想像です。いまだに都の公式説明は無いのです。

(3)については都が示した3ページの資料だけで都立高校が得点推定業務をこなすことは不可能なので、何かしらの追加説明やプログラム提供などのフォローがあったものと思われますが、これもあくまでも想像。詳細は一切不明です。

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②都立高校の認識がバラバラ

「都立高校入試英語スピーキングテストに反対する保護者の会」(以降、「保護者の会」)が今年1月〜2月頭にかけて複数の都立高校に電話で問い合わせた結果、学力検査(2月21日)および合格発表(3月1日)まで既に約1ヶ月という直前期にもかかわらず、いまだに高校ごとに認識がバラバラという惨状も明らかになりました。

保護者の会 2月20日 記者会見資料

保護者の会 2月20日 記者会見資料

*学力検査前日(2月20日)の記者会見の保護者の会によるこの問題の説明は下記映像を参照ください。該当部分は12分4秒から約1分間

特に深刻なのは、不受験者の得点推定業務の担当者(都教委 or 都立高校)すらも認識がズレている点。このような状況で200校弱もある都立高校で当該業務がを正しく遂行されたのか非常に疑わしいです。

そこで本件について筆者が開示請求したところ、東京都教育委員会は情報の大半の開示を「ありえない」理由で拒んだ上、説明すらも拒否。当該業務は進め方すらも明かせず、説明に耐えられないほど杜撰であることが改めて浮き彫りになりました。

今回のニュースレターでは、「開示請求」と「東京都への個別確認」で明らかになった、恥も外聞も捨てて問題から逃げ続ける東京都教育委員会の異常性をお伝えします。首都・東京都で入試の公平性・透明性が跡形もなく崩壊している実態がお分かり頂けるはずです。

本編の目次

  • 開示請求内容

  • お決まりの60日延長で時間稼ぎ

  • 赤裸々な理由で黒塗りと不開示になった行政文書

  • あらゆる手段で説明から逃げる都教委

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