【独自】インボイス個人情報問題の国税庁対応はザル。今も氏名を含む全件データは取得可能(1)
今回のニュースレターは個人情報の悪用を助長する恐れがあるため、情報の抜き取り方法に関する核心部分の記載を当初は控えていましたが、告発(2023年2月3日 超党派議連公開ヒアリング)から1週間が経過したことを受けて、2月10日より後半(個人情報を全件取得できる仕組み、原因)を追記しました。
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この記事を書いた理由
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インボイス制度の問題の一つとして注目を集めていた氏名を含む個人情報の全件ダウンロードは、昨年9月に与党議員(赤松健氏、山田太郎氏)の要望後に国税庁が迅速に対応して解決したとされていた
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しかし、実際はその対応がザル過ぎて解決していないという衝撃的な実態が判明した
この記事で理解できること
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インボイス発行事業者の氏名を含む個人情報の全件ダウンロードは今現在も実質的に可能
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昨年9月にあたかも問題が解決したかのように喧伝した与党議員、メディアの情報発信は不用意であった
これまでの経緯
インボイス発行事業者の氏名を含む個人情報の全件ダウンロードが可能な問題については、芸名で活動するクリエーター、本名を知る相手(家族、元パートナー、ストーカー、宗教)から逃げる個人事業主、有名人などにとって特に深刻なため、大きな注目を集めていました。
*詳細は、問題点を伝えた筆者の集英社オンライン記事「氏名も住所も全世界に公開! インボイス制度導入で「あの漫画家の本名がバレる」は、やはり本当だった」(2022年9月10日) 参照
*問題の全体像に占める個人情報流出の位置付けは、筆者のニュースレター「国民全員に悪影響が連鎖するインボイス。被害の全体像」(2022年9月29日) 参照
この問題をめぐっては、昨年8月に市民団体が財務省・国税庁への申し入れで改善を求めたにもかかわらず、ゼロ回答。
*詳細は、申し入れに同席した筆者の集英社オンライン記事「財務省が衝撃の回答。“本名バレ”不可避でもインボイス制度を導入する「本当の理由」」(2022年9月10日) 参照
ところが、昨年9月22日に与党議員(赤松健氏、山田太郎氏)が国税庁に要望すると、なんと当日中に全件ダウンロードが停止。
invoice-kohyo.nta.go.jp/download/index…
今後の対応は、週明けに改めて国税庁に確認した上で各団体に報告します。国税庁の早めな対応は評価しますが、まだまだ最初の一歩。今後も気を緩めず行きます!
4日後(9月26日)には全件ダウンロードできるデータから個人情報(氏名・所在地・屋号等)を抜いて公開を再開。これまでとは一転して異様にスピーディーな展開を見せました。
invoice-kohyo.nta.go.jp/download/index…
この形でも登録番号の有効性は確認できる上、webAPI(認証を強化)は生きていて企業も困らないはず。
また、9月22日の赤松健議員の報告ツイートのわずか1時間後、まだ具体的な改善方法すら不明の段階で朝日新聞があたかも身バレ問題が解決するかのように報道。 *報道の異様な早さから判断して、事前に財務省・国税庁からリークがあったと見られる
このように非常に奇妙な展開を辿ったため、「インボイス反対を掲げて参議院選挙に当選した自民党 赤松健議員は、この個人情報問題の改善を大々的に演出することで、むしろインボイス導入を後押ししているのではないか」という疑念を筆者も含めて多くの方々が抱きました。
「税の押し付け合い(しかも弱い立場が押し付けられやすい)」と「事務負担の膨大な増大」です。
問題が解決していないと発覚
そして、この懸念は的中したと言えます。
年が明けて1月、筆者のもとに「インボイス発行事業者の個人情報の全件ダウンロードは今現在も実質的に可能」という衝撃的な情報提供が寄せられたのです。筆者が方法を確認したところ、確かにその通りでした。
ちなみに2023年1月31日時点の個人事業主の登録数は約56万件。インボイス発行事業者公表サイトの情報をもとに「ある操作」を行うことで、氏名、所在地、屋号などの個人情報を含む全件データを約56万件も取得できるのです。筆者が昨年9月10日に公開した記事で指摘した個人情報をめぐる様々な懸念は今も解決していないとも言えます。
復元した個人情報。画像ではモザイクをかけているが、実際はモザイク無しで指名、所在地、屋号などがセットになったデータを数十万件単位で取得可能
明日(2月3日)12時〜予定の超党派議連公開ヒアリングでは、この問題について技術者が説明予定なので、ぜひご注目ください。
これ以降、現時点で明かせる範囲で、この問題の詳細をお伝えします。
*個人情報の悪用の可能性を踏まえて、公開範囲は有料購読者に限定します。通常と異なり、一定期間経過後も無料購読者には公開しません。
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これ以降の目次
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氏名を含む個人情報を全件取得できる仕組み
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緊急対応がザルになっている原因
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改善策の具体的提案
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まとめ(この記事で理解できたこと)