公示翌日に特定政党を利する選挙情勢を報じた朝日新聞社員の認識
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こんにちは。犬飼淳です。
2022年6月23日、朝日新聞は「自公、改選過半数を上回る勢い、維新は倍増視野 朝日序盤情勢調査」という見出しの記事を報じました。
*有料会員記事だが未登録者も記事途中まで閲覧可能。筆者は全文を確認しており、おおむね見出しの通り自民・公明・維新の優勢を伝える内容。
この記事をめぐって、参議院選挙の公示翌日(投開票の17日前)という超序盤戦にもかかわらず、特定政党(自民・公明・維新)の優勢を強調する見出しで報じたことに多くの批判が巻き起こりました。Twitterアカウントをお持ちの方は、下記ツイートのリプライや引用リツイートを覗けば、批判の声の凄まじさがお分かり頂けます。6月28日時点でリツイート約500件に対して引用リツイートは2倍以上の1200件超もあり、その大半が記事の不適切さを批判する内容です。
また、Twitterアカウントをお持ちでない方向けに、批判の声の例を2つ掲載します。
ほな一面に、しかも公示直後に出すなや
いい加減選挙報道の仕方日本は考えやな
asahi.com/articles/ASQ6R…
とりあえず維新国民なるべく落として自民公明削ろう 自公、過半数上回る勢い、維新は改選6議席の倍増視野 朝日情勢調査:朝日新聞デジタル 7月10日投開票の参院選について、朝日新聞社は22、23日、全国の有権者を対象に電話とインターネットによる情勢調査を行 www.asahi.com
メディアなら、この選挙でなにが争点で各党はどういう見解を持っているかを集中的に特集すべき。
現政権を支持するということは、物価高も支持するということ
自公、改選過半数上回る勢い、維新は倍増視野 朝日序盤情勢調査(朝日新聞デジタル) news.yahoo.co.jp/articles/427bc… 自公、過半数上回る勢い、維新は改選6議席の倍増視野 朝日情勢調査(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース 7月10日投開票の参院選について、朝日新聞社は22、23日、全国の有権者を対象に電話とインターネットによる情勢調査を行 news.yahoo.co.jp
しかも、この記事にはいわゆる「署名」がありません。つまり、これだけ物議を醸した記事でありながら、誰が書いたのか不明なのです。
これを放置すると、始まったばかりの参院選において今後もミスリードを招く報道が容認されてしまう。筆者は強い危機感を覚えて、この問題に関係する朝日新聞社員に対して簡易的な「公開質問」で認識を問うことを決めました。
ちなみに、他メディアでも似たような情勢報道が目につく中で朝日新聞を対象とした理由は以下3点の理由があります。
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一般的にリベラルと認識されている全国紙2紙(朝日新聞・毎日新聞)のうちの1紙であり、国民視点での悪影響が大きい
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公示翌日というあまりにも早い段階で報じており、悪質性が高い
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「投稿は個人の意見」とプロフィールに明記した、実名のTwitterアカウントを運営する社員が多い(下記画像参照)。お互いに参院選前で忙しい中であってもコンタクトをとりやすい
「個人の意見」と「朝日新聞」をキーワードにTwitterアカウントを検索した結果。まるで社内でテンプレートでもあるかのように「投稿は個人の意見」であることをプロフィールに明記する朝日新聞社員の実名アカウントがズラリと並ぶ。これはあくまで一例であり、実際はこうしたアカウントが50件程度はヒットする。
前置きが長くなりましたが、今回のニュースレターではこの公開質問の詳細、その後の顛末を報告します。
まずは、どのような方法で誰に対して公開質問を送付したのかを説明します。
公開質問の進め方
質問先
本来であれば記事の執筆者および公開判断した責任者に直接問うべきですが、先ほど説明した通り不明のため、関係者である以下5名を質問先として選定しました。
当該記事 電子版に「コメントプラス」機能で肯定的な内容をコメントした2名(藤田直央 編集委員、前田直人 コンテンツ戦略ディレクター)
朝日新聞 当該記事への2名のコメント内容
*上記画像は未登録者が閲覧可能な範囲に絞って掲載しているが、筆者は全文を確認済み。両名とも記事をおおむね肯定するコメントが続いており、選挙序盤に特定政党を利する内容を報じたことへの問題意識はゼロ
政治部に所属し、Twitterで筆者をフォロー中の3名(内田晃氏、東岡徹氏、三輪さち子氏)
*当該記事は政治部が関与している可能性が高く、同部門の社員として他人事ではないことに加え、筆者のTwitterをフォローしていることから少なくとも筆者の存在を認識していることは明らかのため
内容
6月25日 午前9時頃、質問先5名にTwitterのDMもしくはメンションでに以下の内容を送付しました。*読みやすくするため今回は太字で記載したが、実際のDMやメンションでは太字設定はなし
突然の連絡失礼致します。フリーライターの犬飼淳と申します。下記の記事に対する『所属社員としての認識』をテーマに取材したく、連絡致しました。
朝日新聞「自公、改選過半数を上回る勢い、維新は倍増視野 朝日序盤情勢調査」(2022年6月23日) https://digital.asahi.com/articles/ASQ6R6HSMQ6KUZPS009.html
Twitter経由の不躾な形で恐縮ですが、簡易的な公開質問と捉えて頂ければ幸いです。
*正式に記録に残すためメールでのやり取りを希望する場合、メールアドレスを連絡して頂ければ同じ内容をメールで再送信します。
<公開質問>
Q1 海外には投票前の選挙世論調査の公表を禁止する国が多数あります。(イタリア、オーストラリア、カナダ、韓国、スペイン、ドイツ、フランス等)これらの国々はどのような悪影響を懸念して、公表を禁止していると理解していますか?
*「国によって状況は異なる」という理由で回答できない場合、1つの国を例に挙げて構いません
Q2 公示翌日という選挙序盤に一部の政党(自民、公明、維新)の優勢を見出しで強調する記事を朝日新聞が公開したことは報道機関として適切だと考えていますか?
*「はい」か「いいえ」を明示し、その理由とともに回答してください*回答はあくまでも「個人の見解」で構いません
Q3 (もしご存じの場合)当該記事の執筆者、および公開を判断した責任者は誰ですか?
*部署名ではなく個人名を明記してください
<回答期限>
6月28日(火)午前9時
*本質問の送信から丸3日後
*回答方法はDM返信で構いません。
*回答結果は犬飼のTwitterおよびニュースレターで公表予定です。期日までに回答が無かった場合はその旨を公表します
<質問先>
今回の公開質問は下記5名に同じ内容を送信しています。
・当該記事 電子版に「コメントプラス」機能で肯定的な内容をコメントした2名 藤田直央編集委員 前田直人コンテンツ戦略ディレクター
・政治部に所属し、Twitterで犬飼をフォロー中の3名(内田晃氏、東岡徹氏、三輪さち子氏)
選挙前でお忙しいところ恐れ入りますが、ご回答頂けると幸いです。
以上になります。
公開質問を行った事実の公表方法
簡易的な公開質問を送付したという事実は以下ツイートにて、質問送付直後の6月25日9:36に公開しました。約150件という決して少なくない数のリツイートがなされたことに加え、筆者のアクションに対して概ね肯定的な反応が寄せられています。Twitterアカウントをお持ちの方はリプライや引用リツイートによる反応を以下ツイートから直接ご確認頂けます。
質問先:@naotakafujita @Nao_Maeda_Asahi @uchidakira @HigashiokaT @MIWAsachik0
Twitterアカウントをお持ちでない方向けに、賛同の声の例をいくつか掲載します。
〈投票率を下げる要因の一つではないか〉とも考えています。
質問先の補足
当該記事の執筆者が分からないため便宜上5名の質問先を指名しましたが、5名以外でこの問題に関心がある朝日新聞社員がいるかもしれない。そうした万に一つの可能性を考えて、指名した5名以外でも回答可能であると以下ツイートで告知しました。
*以下、現時点で私をフォローしている方にはメンションを入れておきます。
@ishida1970asahi @R_KitanoR @takano_r @coccodesho
@MINAMIAKIRA55
また、現在は政治部所属でないものの、筆者をフォローしていることが確認できている朝日新聞社員5名には「お知らせ」の意味も込めて上記ツイートにメンションを付けました。
結果
質問先 5名のうち、質問期限までに回答があったのは0名でした。そればかりでなく、回答に関する問い合わせ、公開質問を受け取った旨の返信すらも一切ありませんでした。
また、質問先5名以外の回答も可能と告知しましたが、他の朝日新聞社員からも反応は一切ありませんでした。
*質問送付(6月25日9時)から期限(6月28日9時)までの3日間、対象者が参院選等について従来通りにツイートを連日 繰り返していたことは確認済み。つまり、Twitterアカウント自体が休眠していた者は皆無。下記の名前をクリックすれば、本人のTwitterにて確認可能
<質問先5名のTwitter>
<関心があれば回答可能であることをメンションで伝えた5名のTwitter>
公開質問をめぐる顛末は以上です。
ここで終わってしまうとさすがに中身が無さすぎるので、少し補足したいと思います。
まず、ここまで読んで筆者に対して「見ず知らずの相手にいきなり粗末な『公開質問』もどきをTwitterのDMやらメンションで送りつけて、なんて無礼な人間なんだ!」と感じた方もいると思います。その指摘はある意味で正しくて、今回の進め方はかなり強引だったと私も自覚しています。
・・・しかし、実は今回 名前を挙げた朝日新聞社員の中には、私が過去に接点を持った人物が複数名 含まれています。さらに、今回の手法自体が私自身が過去に朝日新聞から取材依頼を受けた際の連絡方法に倣ったものでした。その具体例を2つ挙げます。
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例1:見ず知らずの朝日新聞社員がTwitterのDM機能で私に対して取材依頼を行い、私が無償協力した事例
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例2:朝日新聞社員が某雑誌に寄稿した際に私の視覚化手法をトピックとして取り入れた事例
その際に本人とTwitterのDMやリプライでやり取りしていますが、迅速(連絡から常に1時間以内、もしくは数時間以内など)に朝日新聞社員からレスポンスが返ってきました。
つまり、自らが必要とする場合は迅速かつ丁寧に対応して都合よく利用してきた一方、自らに都合の悪い場合は一転して完全無視するという姿勢が今回の一件で明らかになってしまったとも言えます。
さらに厳しく言えば、問題の朝日新聞社員らは
「都合の悪い質問からは徹底的に逃げ、国民が忘れるのをひたすら待つ。『投稿は個人の意見』と自ら位置付けるTwitterですら反応しない」
という点において、現政権と全く同じ倫理観であることも暗に示しています。権力監視が本来の役割のはずが、実際は権力と親和性の高い存在と言えるのではないでしょうか。
これ以降、2つの事例について関係した朝日新聞社員の実名と共に詳細をお伝えします。また、ここまでに名前が挙がった朝日新聞社員の中には意外な形で間接的反応を示した人物が1名いるため、その件も実名を明かしてお伝えします。
*第三者としては気分が悪くなる内容を含むと自覚しているので公開範囲は限定し、今後も広げる予定はありません。