【独自】隠された神宮外苑再開発(1)JSCと三井不動産の議事録(2017年4月~12月)
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この記事を書いた理由
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事業者や東京都が問題だらけの神宮外苑再開発を強行できた要因の一つは、不都合な事実を徹底的に隠すことで抗議活動の活発化を遅らせ、その間に規制緩和や契約を既成事実化させたことにある
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これを放置すれば、悪しき成功事例として他地域でも再開発と称した環境破壊に悪用されてしまう。現に都内では日比谷公園、葛西臨海水族園、小山八幡神社などで類似の手法による環境破壊が進んでいる
この記事で理解できること
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国民には計画の全容が隠されていた2017年前後に、事業者(日本スポーツ振興センター、三井不動産、UR都市機構等)は、水面下で着実に神宮外苑再開発を進めていたこと
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事業者の意思決定では、自治体(東京都、渋谷区、新宿区、港区)より遥かに露骨に環境保護よりも収益拡大が優先されていたこと
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野球場とラグビー場の入れ替えが事業者の間で決定事項と認識された時期
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新ラグビー場周辺の風致地区変更が必要になった本当の理由
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新ラグビー場が「屋外型(スタジアム)」から「屋内型(ドーム)」に変更された議論の経緯
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公共性が高い既存スポーツ施設の多くが廃止される中、移転してまで存続する富裕層向けテニスコートに対する日本スポーツ振興センターの認識
3つの観点(環境破壊、景観破壊、スポーツ文化破壊)で多大な被害を及ぼす上、進め方にも多くの問題を抱える神宮外苑再開発。事業者(三井不動産、伊藤忠商事、日本スポーツ振興センター、明治神宮等)や東京都が計画を強行できた要因の一つは、不都合な情報は長期間にわたって徹底的に隠し、抗議活動の活発化を遅らせたことにあります。現に、2021年12月にようやく再開発計画の詳細が発表されて以降はオンライン署名などの抗議活動が活発化しましたが、すでに規制緩和や契約は既成事実化されていたこともあり、今年3月の工事開始を止めるには至りませんでした。
約10年にわたる水面下の動きを探るため、これまで筆者は東京都が保有する関連文書を複数回にわたって開示請求してきました。しかし、開示文書に書かれていたのは、事業者からの提案内容の追認や微修正が中心で、肝心の意思決定プロセスはほぼ皆無。
▼2012年度~2017年度の関連文書4800枚超を東京都に開示請求した結果
▼2020年3月~2021年6月に開催された会議体「公園まちづくり計画」の関連文書2000枚超を東京都に開示請求した結果
そこで筆者は今年7月末に事業者の中で唯一開示請求が可能な日本スポーツ振興センター(以降、「JSC」と表記する場合あり)に対して、神宮外苑再開発の全ての関連文書を開示請求。
*JSCは独立行政法人のため開示請求が可能。一方、三井不動産、伊藤忠商事等は民間企業のため開示請求は不可能
*開示請求対象は水面下で意思決定のやり取りがあったと見られる2019年度以前に限定
ところが1ヶ月後、他の行政機関への開示請求では経験しことがない、予想外の通知が届きました。
通知「開示決定等の期限の特例の適用について」 2023年8月22日付
対象文書が多く、開示情報の精査に時間が要することを理由に、JSCは最終的な開示決定期限を2024年3月29日に延長。開示請求したのは2023年7月25日ですから、実に8ヶ月という今まで見たことがないレベルの超長期の延長を決定したことになります。JSCに対象文書のボリュームを確認したところ、筆者にとっても最大のターゲットである「平成26年度~令和元年度 神宮外苑まちづくり関係」が約3500枚あり、これが精査を要する文書の大半を占めるとのこと。しかし、筆者がこれまで神宮外苑再開発について東京都から数千枚レベルの開示請求を受けた際は、いずれも延長期限の60日以内に開示決定されてきたわけですから、今回のJSCの8ヶ月という延長期間の異常性は突出しています。黒塗りにしなければならないほど不都合な内容がいかに多いかを物語っているとも言えます。
そして、この直感は当たっていました。9月25日付で1回目の開示決定が下り、JSCはまずは以下の文書43点(403枚)を筆者に交付。
*約3500枚のうち残り(約3100枚)は今年12月末と来年3月末の2回に分けて、順次開示決定の予定
開示決定通知書 2023年9月25日付 P2
開示決定通知書 2023年9月25日付 P3
これらの文書の大半は、筆者が喉から手が出るほど欲しかった事業者間の議事録・打ち合わせ資料のため大いに期待したのですが、交付された文書の中身を確認すると議事録の大半は黒塗り。打ち合わせ時に配布された説明資料に至っては、ほぼ「海苔弁」状態でした。
危惧した通り、JSCはじっくりと2ヶ月かけて1回目の交付対象である403枚を精査し、不都合な内容はことごとく黒塗りしたのでしょう。ただ、筆者はこれまで神宮外苑再開発に関して東京都や新宿区に対して 計10件以上の開示請求を行い、目を通した関連文書は約7千枚。これまでの知見と組み合わせることで、JSCが開示した海苔の隙間から辛うじて新たな気付きを幾つか得ることができました。
まずは今回のニュースレターでは、2017年4月~12月に新秩父宮ラグビー場の設計や費用が具体的に議論されたJSCと三井不動産の打ち合わせ資料(議事録・配布資料)全11回分を掲載しながら、その気付きを紹介します。
*1回目の開示決定で交付された文書43点(403枚)のうち11点(71枚)に該当
©️2023 Jun Inukai
©️2023 Jun Inukai *全11回の打ち合わせ資料 全71枚は本編で紹介
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