【独自】インボイス未登録が理由の取引停止を独禁法では取り締まれない
*公共性が非常に高いと判断したため、冒頭の経緯は無料読者にも公開します
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この記事を書いた理由
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今年10月から導入予定のインボイスによって、未登録の事業者が市場から排除される恐れが高い
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こうした懸念に対して政府は「独禁法や下請Gメンで取り締まる」と主張してきたが、その根底を覆す事実が今年3月以降に次々と明らかになった
この記事で理解できること
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インボイス未登録を理由に一方的に取引を停止された証拠が書面で残っていても、独禁法では取り締まれないこと
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そもそも独禁法や下請Gメンは企業対企業の取り締まりを想定した制度設計のため、個人事業主が当事者となるインボイスのトラブルを解決する仕組み(条文・体制・スピード感)ではないこと
政府が今年10月からの開始を目指すインボイス制度。
不利益を一切被らない国民は誰一人として存在せず、(一般国民としては)百害あって一利なしの制度と断言できるため、「STOP!インボイス」を始め、多くの当事者がインボイス中止を求めてきました。
*被害の全体像は筆者のtheletter「国民全員に悪影響が連鎖するインボイス。被害の全体像」(2022年9月29日)参照
懸念される問題の一つとして、インボイスに登録しないことを選んだ個人事業主などの免税事業者が市場から排除される恐れがあります。
*受注側がインボイス未登録の場合、発注側は仕入税額控除できずに納税額が増えたり、事務負担が煩雑になるため
これに対して、政府は一貫して以下の対策によって懸念を払拭すると主張してきました。
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独禁法や下請法のQ&Aを公表して、取り扱いを明確化した
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各事業者団体に法令遵守を要請する
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書面調査や下請Gメンを強化する
現に、今年3月上旬の関連する国会質疑を整理しただけでも、(同じ原稿を使い回しているから当たり前ではありますが)ほぼ一字一句同じ文言で答弁しています。
©️2023 Jun Inukai
これらの対策の核となっているQ&Aでは、確かに類型ごとに取り締まり対象となる発注側の行為が具体的に示されています。
©️2023 Jun Inukai
ところが、今年3月14日に聞き捨てならない国会答弁がありました。
【立憲民主党 柴愼一】(公取委等が示した独禁法・下請法のQ&Aでは)優越的な地位の濫用として一方的に言うのが駄目なんだと。だから、丁寧な交渉で双方納得すれば問題ないということになっている。だから、取引停止も、著しく低い取引価格を設定して、これに応じない場合は取引停止だと言うときは独禁法上の問題となるおそれがありますよとしています。もう一方で、インボイス発行事業者と免税事業者を、例えば取引元が区分して作業すると経理が大変なので、もう事務負担掛かるのでやめたいということについては独禁法上は問題ないんでしょうか。
【公正取引委員会 品川武 部長】取引先事業者がインボイス制度施行後に真に免税事業者との取引に係る事務が煩雑になることのみが原因となって取引を停止する場合、それ自体を独占禁止法上の問題とすることは困難であると思います。いずれにせよ、ここは個別に判断をすることになりますので、先ほど申し上げたように、その停止の経緯でありますとか停止の真の理由は何かということを個別に判断して対応することと思っております。
公取委は「事務負担の増大を理由にインボイス未登録の事業者との取引を停止しても独禁法は問題ない」という趣旨の衝撃的な答弁をしているのです。公取委がこのような見解を国会で述べれば、発注側がこれに倣うのは必然であり、Q&Aで示した6類型のうちの「5 取引の停止」「6 登録事業者となるような慫慂」は形骸化します。
さらに、時を同じくして今年3月、ある給食納入業者が「インボイス未登録」を理由に一方的な取引停止を書面で突然通知される事案が発生。これもQ&A 6類型の「5 取引の停止」「6登録事業者となるような慫慂」に明らかに該当しており、取引先の学校法人はこの通知を不用意にも書面で行なったため、明確な証拠も残っているという状況。
*問題の書面(実物)は後ほど紹介
政府が主張してきたインボイス未登録を理由にした市場排除の根底を揺るがす事例が2件(国会答弁、給食納入業者の事例)も立て続けに発生したことを受けて、インボイスの問題点を継続的に指摘してきた全商連(全国商工団体連合会)、STOP!インボイス、VOICTION等の各団体は4月28日、公正取引委員会による個別レクチャーの機会を設けて頂き、見解を問い質しました。
*筆者もインボイスの問題に継続的に取り組んできたため同席
しかし、約1時間余りのレクチャーで明らかになったのは、これまで政府が主張してきた対策が実際は使い物にならないことばかりでした。
©️2023 Jun Inukai
今回のニュースレターでは、こうした衝撃的な事実が次々と明らかになった4月28日の公正取引委員会レクチャーの質疑の詳細について、報道関係者として唯一同席した筆者がリポートします。
公正取引委員会レクチャー当日の様子(2023年4月28日 参議院議員会館)撮影:犬飼淳 *説明側(公取委)は問題の答弁を行った品川武部長と同じ経済取引局取引部所属の加瀬川晃啓 課長補佐 1名が参加。質問側は全商連、STOP!インボイス、VOICTION等が参加
本編の目次
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問題1:「インボイス未登録を理由に取引を停止する」と明記した書面の証拠があっても、独禁法で取り締まれない *給食納入業者宛の通知(実物)あり
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問題2:「事務負担の増大」を理由にインボイス未登録の事業者との取引を停止しても、独禁法で取り締まれない
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問題3:下請Gメンを倍増しても交渉が存在しない取引停止は取り締まれない
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問題4:インボイス未登録事業者の報酬を下げた事例を内閣官房・国交省が横展開目的で喧伝
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その後の省庁の対応状況
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