【現場リポート】国立大学法人法の強行採決時、委員会室で何が起きていたか

国立大学法人法が強行採決された2023年12月12日の参議院文教科学委員会。中継映像には映らなかった点を中心に、国会傍聴の所感をリポートします。
犬飼淳 2023.12.14
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この記事を書いた理由

  • 法案の内容に関係なく賛成してしまう政党(自民、公明、維新、国民民主等)が国会で圧倒的多数の議席を確保しているため、審議が不十分なままで問題法案(国大法、入管法、マイナ法案等)が次々と強行採決される状況が続いている

  • さらに、国会内での報道の権限を実質的に独占する大手メディアの怠慢が、国会審議の緊張感欠如を助長している(ように筆者には見える)

この記事で理解できること

  • 2023年12月12日の参議院文教科学委員会でインターネット中継には映らなかった事柄から見える、国会審議の問題点

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今年9月に突如として発覚した国立大学法人法の改正案は従来の議論から大きく逸脱しており策定プロセスが不明な上、日本の大学教育を崩壊させるほどの問題点を抱えています。

*問題の全体像は以下ニュースレター参照

しかも、参議院で審議入りした12月上旬、所管の文教科学委員会の理事懇談会にて、運営方針会議の設置対象が突如として国際卓越研究大学以外に広がった経緯・時期・決定者など、いわゆる立法事実を示す公文書が存在しないことが次々と発覚。

蓮舫💙💛RENHO🇯🇵
@renho_sha
驚きました。

卓越大学認定のための必置要件、運営方針会議を一定規模以上の国立大に広げるとした「事務的な整理が詰まりつつある」として文科省は6/1に関係大学に説明。どこで整理をして広げたのか公文書を求めると「ありません」と。高等教育局内で意思決定はしたが経過を記す公文書は「ない」と。
2023/12/06 11:58
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吉良よし子
@kirayoshiko
なお、こうした整理に至った経過についての公文書は「存在しない」と文科省は強弁。ありえません。

CSTIの結論とも、昨年の政府答弁とも違う法案となった成立過程を示すこともなく、押し通そうということ自体が民主主義の破壊。

引き続き、廃案めざしがんばります
#国立大学法人法改悪に反対します
2023/12/07 12:15
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つまり、改正案の内容自体が問題だらけの上、その検討経緯が一切不明なわけです。このような異常事態のままでは採決どころか審議すらも不可能。12月13日に臨時国会は会期末を迎えるため、12月11日の日中までは今国会中の法案成立の可能性は低くなったと安堵する声も出始めていました。

ところが12月11日の夕方、委員長職権で翌12日の委員会強行開催を与党が決定。

吉良よし子
@kirayoshiko
明日12/12の13時から法案審議の委員会の開催が、委員長職権で決められてしまいました。

法案の対象が拡大した経過を示す公文書が「ない」という法案を成立させるわけにはいきません。

最後まで法案に反対します。
#国立大学法人法改悪に反対します
#国立大学法人法改正案に反対します
吉良よし子 @kirayoshiko
国会最終盤。 稼ぐため学費値上げや軍事研究もいとわない?政財界言いなりの「稼げる大学」づくりを押し付ける国大法改正案は正念場。 法案の対象が拡大した経過を示す公文書が「ない」まま審議・採決ありえない。 #国立大学法人法改正案に反対します #国立大学法人法改悪に反対します 声広げ廃案へ! https://t.co/RxNbPsEJSW
2023/12/11 17:09
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強行採決の可能性もあったため、筆者は先月の衆議院に続いて国会審議を現地で傍聴することにしました。

*当日は、以下のタイムスケジュールに従って進行

2023年12月12日 参議院文教科学委員会 予定

2023年12月12日 参議院文教科学委員会 予定

4時間弱の質疑中、質問者6名中5名(宮口治子議員以外)は全ての質問時間を当日最大の関心事である国立大学法人法に充てて、様々な角度から質問。

*唯一の例外である宮口治子議員についても、冒頭の3分間ほどを自らの選挙区・広島に因んで「はだしのゲン」について質問した以外は、全て国立大学法人法について質問

特に、12月上旬の理事懇談会で「公文書は存在しない」とされていた立法事実(運営方針会議の設置対象が突如として国際卓越研究大学以外に広がった経緯、決定者、時期)は、「委員会で説明する」という大前提で委員会の強行開催に至ったため、複数の議員が繰り返し質問。しかし、盛山正仁文科大臣および文科省(高等教育局 池田貴城局長)は従来通りの曖昧な説明で時間を浪費し、新たに分かったことはごく僅か。結局、法案の懸念点は全く払拭されないばかりか、「まともな立法事実を確認できない」ことばかりが浮き彫りになっただけで、予定していた質疑は16時56分に終了。そして、約25分の休憩中に開催された理事会にて、質疑は終了して採決することを決定。17時21分に再開された委員会にて、自民・公明・維新・国民民主の賛成によって国立大学法人法改正案は可決してしまいました。

*その後、翌13日の本会議で法案成立

インターネット中継映像(2023年12月12日17時35分頃 参議院文教科学委員会 国立大学法人法改正案の採決場面) *<b>自民、公明、維新、国民民主</b>の議員は<b>全員</b>が挙手(=可決に賛成)

インターネット中継映像(2023年12月12日17時35分頃 参議院文教科学委員会 国立大学法人法改正案の採決場面) *自民、公明、維新、国民民主の議員は全員が挙手(=可決に賛成)

いわゆる「悪政4党」(自民・公明・維新・国民)がこのような暴挙に及んだ背景として、大手メディアの報道放棄も大いに関係しているように思います。というのも先月の衆議院での審議と同様、今回も傍聴席はほぼ満席の一方、記者席はガラガラ。テレビカメラに至っては、ついに1社も現れませんでした。

このことに限らず、4時間半以上に及んだ同委員会を全て現地で傍聴した筆者は、今回も中継映像には映らない現地の様子を数多く目撃しました。今回のニュースレターでは「委員会室のレイアウト」や「中継が途切れた場面(休憩時)の出来事」に着目して昨今の国会審議そのものの問題点について改めて所感を共有したいと思います。

*言及の必要性があると判断した国会議員は実名で具体的に指摘します

本編の目次

  • 国会での写真・映像撮影の権限を独占しながら、報道を放棄する大手メディア

  • 衆議院と同様、満席の傍聴席とガラガラの記者席

  • 衆議院と異なり、参議院は学級崩壊していない理由

  • 法改正に賛成した国民民主党は本当に賛成だったのか

  • 法改正に反対した立憲民主党は本当に反対だったのか

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