「消費税は預かり金ではない」 声優が証明した財務省の論理破綻

2022年12月8日に開催されたインボイス超党派議連による第2回ヒアリング。地裁判決にもとづく疑問を声優がストレートにぶつけたことによって預かり金をめぐる財務省説明の論理破綻が明白に。その詳細をリポートします。
犬飼淳 2022.12.12
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この記事を書いた理由

  • インボイスには妥当な導入根拠があると誤解している国民が一定数存在する

  • その原因の一つとして、「消費税は預かり金であるから、現状の免税事業者は本来納めるべき消費税を納めていない」という大きな誤解がある

この記事で理解できること

  • 「消費税は預かり金である」という主張は、裁判所の判決で明確に否定されており、現在も有効であること

  • この判決に基づいて、預かり金の解釈を声優が追及した結果、財務省側の論理破綻が明確になったこと

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インボイス中止に向けて大きな鍵を握る税制改正大綱の発表(現時点では12月15日頃の見込み)を目前に控えた12月8日、インボイス問題検討・超党派議員連盟 第2回ヒアリングが衆議院第一議員会館で開催され、筆者は現地参加しました。

このヒアリングは、インボイス導入に反対する各業界の声を直接伝え、財務省・国税庁の官僚に疑問を直接質問する試みで、11月16日に開催された第1回は「フリージャーナリスト」 と「エンタメ業界」が対象となり、筆者は前者を代表してスピーチ。

そして、今回(第2回)は「建設業界」と「エンタメ業界」を対象に実施され、官僚2名(財務省 染谷浩史 主税局税制第二課 企画調整室長、国税庁 福田あずさ 課税部 軽減税率・インボイス制度室長)と業界当事者の質疑も実現しました。

*エンタメ業界は声優・アニメーター・漫画・演劇などの複数領域でインボイス制度への組織的な反対活動が活発化している背景があり、2回連続で対象となった

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映像

約1時間のノーカット映像はこちらで公開しています。特に終盤(37分54秒以降)の質疑は、裁判所の判例に基づいた声優の追及によって財務省の論理破綻が明らかになり、非常に見どころの多い展開となりました。

<映像の主な内容>

0分0秒〜 冒頭挨拶

2分25秒〜 全国建設労働組合総連合 ヒアリング

全国建設労働組合総連合 西雅史 税金対策部長が一人親方のアンケート結果、インボイス登録の強要事例を説明。インボイスを理由に廃業を検討する一人親方が1割程度に達するなどインボイス導入後の悪影響をアンケート結果にもとづいて定量的に説明。

18分18秒〜 全国建設労働組合総連合 質疑

ヒアリング結果で挙がった不安・疑問に財務省・国税庁が回答 。しかし、大半は「制度の周知に努める」という従来説明の繰り返しで、指摘された具体的不安を解消する回答は皆無。

22分30秒〜 エンタメ従事者 ヒアリング

アニメ業界の未来を考える会 大塚雅彦(株式会社TRIGGER代表取締役)がインボイス導入後のアニメ業界への悪影響を説明。宮崎駿氏や新海誠氏であってもデビュー作では失敗したり自主映画からスタートしており、いずれ世界に羽ばたく才能の芽を摘むことに繋がりかねないことを訴えた。

37分54秒〜59分30秒 エンタメ従事者 質疑

声優の福宮あやの氏(VOICTION)がこれまでの財務省説明の矛盾点について4点を具体的に質問。特に「消費税」と「預かり金」の解釈については、「消費税は預かり金ではない」と判断した1990年 東京地裁判決にもとづいて繰り返し追及した結果、財務省側の論理破綻を明らかにした。この終盤の質疑は今回のヒアリングのハイライトとも言える場面となった。

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VOICTIONの質問4点

VOICTION 福宮あやの氏の質問は正確な下調べに基づき、これまでの財務省・国税庁の説明の矛盾を的確に指摘する内容でした。これらの質問や懸念に対して、財務省・国税庁は何一つ具体的に回答できませんでした

©️2022 Jun Inukai
©️2022 Jun Inukai

①(登録番号の税務署のダブルチェック、人員増強予定)については、「従来通り、必要と判断した場合に税務調査を実施するのみ」という回答のみ。質問の趣旨である「インボイス導入後の負担増に税務署が耐えられるか」という懸念を払拭する回答は皆無であり、税務署側も導入後を想定した準備が十分ではない事実が露呈したと言えます。

②(開始時に目標とするインボイス登録率)については、そもそも「免税事業者の登録率に目標値はない」という回答。しかし、これまで財務省・国税庁は登録を促すために周知を促すと繰り返し説明していながら、インボイス登録のハードルが最も高い免税事業者の登録率から目を背けること自体が大きな矛盾と言えます。

③(負担軽減策によって想定される報酬値下げ圧力の財務省からのフォロー)については、「負担軽減策は与党税制調査会で検討しているため、答える立場にない」と言及自体を拒否

そして、④(「消費税は預かり金ではない」と明確に判断された1990年判決への見解)については、「消費税は預り金 的な性格を有する」等と主張。しかし、福宮氏が粘り強く追及する中で判決と決定的に異なる見解「消費税は消費者が負担する」を説明してしまったうえ、同席していた共産党 田村智子議員の援護射撃もあり、論理破綻が明白となりました。

*かねてより「免税事業者は消費税をピンハネしている(=益税が存在する)」とミスリードしてきた財務省は直接的な表現は避けつつも「消費税は消費者が負担する」と国民に誤解させたい背景がある (例)「消費税は預り金 的な性格を有する」「消費税は価格転嫁を通じて事実上 消費者が負担する」等

この質疑は1990年 東京地裁判決を知らないと、財務省側の論理破綻の流れが理解できないと思われます。そこで、この判決を解説するニュースレターを過去に配信しており 判決内容を理解したうえで現地参加した筆者が、④に絞って前提知識と質疑内容をさらに詳しく紹介していきます。

*インボイス中止に向けて大きな鍵を握る税制改正大綱の発表(現時点では12月15日頃の見込み)を目前に控える中、公共性が非常に高いと判断したため無料読者にも公開します。メールアドレス登録のみで無料で全て読めるので、お気軽にご登録ください。

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続きは、4602文字あります。
  • 「消費税は預かり金ではない」と判断した1990年東京地裁判決
  • 質問④の質疑要旨
  • 参考

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