【現場リポート】AV業界に有利なAV新法に反対する緊急アクション & セックスワーカー差別集会への抗議行動(2022年5月22日 新宿駅東口広場)

2022年5月22日に新宿駅東口広場で行われた「AV業界に有利なAV新法に反対する緊急アクション」とカウンター「セックスワーカー差別集会への抗議行動」の現場リポートをお届けします。
犬飼淳 2022.05.23
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こんにちは。犬飼淳です。

5月22日、新宿駅東口広場にて「AV業界に有利なAV新法に反対する緊急アクション」が集会を行いました。さらに、同時刻に同じ場所で「セックスワーカー差別集会への抗議行動」が前者のカウンターとして行われました。

AV新法を巡る双方の主張については、筆者は4日前(5月18日)に以下のニュースレターで整理しており、その後も状況に大きな変化は無いと認識しているため、今回は基本的に触れません。

*筆者とは無関係ですが、5月20日に公開されたTheHEADLINE記事も双方の対立点が簡潔に整理されて分かりやすいです

今回のニュースレターでは、現地に行かないと分からない集会の様子を中心にお伝えします。

注意事項

まず、大前提として、双方を単純に「AV新法 反対派」「AV新法 賛成派」と括るのは不正確なので、今回はそれぞれの陣営を「紫の風船」「赤い傘」と記載します。

  • 紫の風船: 「AV業界に有利なAV新法に反対する緊急アクション」の参加者。5月13日時点の素案であれば条件付き賛成であったり、拙速に進めることに反対する立場の方もいれば、今もなお完全に反対の立場の方もいる。紫のものを身につけることが目印で、当日の参加者には紫の風船が配られていた。

  • 赤い傘: 「セックスワーカー差別集会への抗議行動」の参加者。AV新法に賛成しているというよりも、「紫の風船」側の主張に性産業自体を否定する思想が含まれる(ように見える)ことに強く抗議している。当日の参加者は赤い傘を掲げていた。

つまり、双方の主な争点がそもそも異なっていることに注意が必要です。(「紫の風船」側は「AV新法の是非」、「赤い傘」側は「セックスワーカー差別の是非」)

双方の位置関係

現場の位置関係を整理すると、繁華街(新宿三丁目・歌舞伎町方面)を背にJR新宿駅東口に向かって立って、写真の右側奥が「紫の風船」、左側の赤い傘が固まっている付近が「赤い傘」です。

©️2022 Jun Inukai

©️2022 Jun Inukai

JR新宿駅の出口と繁華街(歌舞伎町・新宿三丁目)方面を結ぶ、最も人通りの多い道の前に「赤い傘」が陣取っているため、ただ通り過ぎただけの通行人でも「赤い傘」の存在・主張には気付きやすい状況でした。一方、「紫の風船」は最も人通りの多い道からは距離が離れていたため、異なる主張をする陣営が2つあること自体に気づかなかった通行人も相当数いたと思われます。

©️2022 Jun Inukai

©️2022 Jun Inukai

双方のほぼ中間地点から撮影した360度写真を見ればわかる通り、陣営付近に滞留している人数は、「紫の風船」(右側)の方が「赤い傘」(左側)より多い印象を受けます。メディア(TBS等)のテレビカメラ、腕章を付けた記者、著名なジャーナリストの方も基本的には「紫の風船」側に張り付いていました。

また、印象的だった点として、「赤い傘」の一部参加者(赤い傘を持っている方など)は反対側の話を聞きに行ったり、自陣営のビラを積極的に渡すなどしていました。実際、上の写真を見れば分かる通り、「赤い傘」を掲げた参加者が右側にも複数居ます。一方、少なくとも私が見た限りでは「紫の風船」の参加者が反対側に行く場面は確認できませんでした。これは、「赤い傘」がカウンターであることも関係しているのかもしれません。

「紫の風船」側

「紫の風船」は参加者自身のスピーチ、メッセージの代読を中心に進められました。

©️2022 Jun Inukai

©️2022 Jun Inukai

参加者が一斉にプラカードを掲げた際の様子

©️2022 Jun Inukai

©️2022 Jun Inukai

*具体的な主張内容は、これまで「AV業界に有利なAV新法に反対する緊急アクション」が主張してきた内容と基本的には同じ

「赤い傘」側

「赤い傘」はカウンターということもあり、参加者自身のスピーチに加えて、至近距離にいる「紫の風船」側への抗議のコールも加えて進められました。また、主な主張内容はA3両面の紙にまとめて通行人に配布していました。

表面(コール内容)

裏面(声明文)

カウンターの様子

「赤い傘」(左側)が「紫の風船」(右側)に対して抗議のコールを行った場面を双方の中間地点から360度カメラで撮影した映像です。

所感

冒頭にも紹介した通り、私は双方の主張の相違点をある程度は理解しているつもりで、どちらか一方の陣営が正しい・間違っているという話ではないと感じています。そのため、私は集会では意識的に両陣営の中間地点に立って、双方の主張をそれぞれ聞くように努めました。しかし、争点が異なっている(「紫の風船」側は「AV新法の賛否」、「赤い傘」側は「セックスワーカー差別の賛否」)ためにおそらく絶対に分かり合えないであろう状況で、双方が主張をぶつけ合う中心地にいるのは想像以上にしんどかったです。

例えば、これがもし人種差別を助長する集会と、それに抗議するカウンターであれば、自分が「人種差別容認」と「人種差別反対」のどちらの立場なのか考えれば気持ちの整理はすぐにつくでしょう。しかし、今回の場合は一方は「AV新法は慎重に議論すべき!」と真っ当な主張をし、もう一方は「セックスワーカーへの差別反対!」とこれも真っ当な主張をしている状況です。それぞれの視点から見れば、双方ともに正しい主張をしているわけです。結局、恥ずかしながら途中で気分が悪くなってしまい、集会の途中で離脱せざるを得ませんでした。

とはいえ片足を突っ込んだ以上、この件は今後も注視していきたいと思います。素案の解釈をめぐっては今後も国会で議論の場が予定されています。

今回のニュースレターは以上になります。

2022年5月22日 犬飼淳

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