【独自】カジノ誘致の表明時に横浜市と記者クラブが開いた不自然な宴会
*今回のニュースレターは特に横浜市民にとって情報の公共性が高いと判断したため、末尾に掲載した証拠写真2枚を除いて、すべての内容を未登録者にも無料公開します。
こんにちは。犬飼淳です。
利害関係者である記者クラブ(横浜市政記者会、横浜ラジオ・テレビ記者会)と横浜市 報道担当職員が5年間(2016年~2020年)で17回以上も宴会を開き、癒着が疑われている問題について、最新状況をお伝えします。情報開示請求によって入手した宴会の申請書からは多くの不審点が見つかっており、関係者へのヒアリングによって、全貌も見え始めています。
経緯
まず、これまでの経緯をおさらいします。
2021年12月21日〜24日
・フリー 三宅勝久記者の情報開示請求によって、記者クラブと横浜市 報道担当職員が 5年間(2016年〜2020年)で17回以上も「意見交換会」と称した宴会を開いたことが相次いで発覚。
*詳細は三宅記者のブログ参照
同年12月23日
・市長記者会見でフリー 寺澤有記者がこの問題を初めて質問。会費が3100円と安過ぎる宴会がある上、二次会の記載がないため、税金が使われた可能性などを指摘し、山中市長は調査を約束。
*寺澤記者の質疑内容は横浜市 会見記録 参照
2022年1月13日
・市長記者会見でフリー 三宅記者が本件を質問。山中市長は「職員の宴会参加は公務ではなくプライベート」と意味不明な回答をし、コンプライアンス指針を全く理解していないことが露呈。
*詳細は三宅記者のブログ 参照
同年2月10日
・市長記者会見でフリー三宅記者、犬飼が本件を質問。犬飼が三度にわたって調査結果の報告時期を訪ねても山中市長は回答を避けた上、三宅記者に対しては前回に続いて「職員の宴会参加は公務ではなくプライベート」と強弁。質疑が紛糾する中、会見途中に山中市長は勝手に退室し、物議を醸す。
*横浜市の公式映像では無かったことにされた終盤の一悶着を含む会見映像は、筆者が撮影・公開した以下のyoutube動画で視聴可能
同年3月3日
・フリー記者3名(三宅、寺澤、犬飼)で横浜市のコンプライアンス担当者(総務局 コンプライアンス推進室、政策局 総務部 総務課)に1時間程度のヒアリングを実施。宴会参加の根拠となった「利害関係者との接触に関する指針」の成り立ちを中心に確認。
同年3月8日
・市長記者会見でフリー三宅記者、犬飼が本件を質問。問題の宴会に参加し、申請書も出した当事者である司会の佐藤広毅 報道担当部長は意味不明な回答(飲酒したかすら覚えていない、自分が申請した宴会だが内容はわからない、など)を繰り返し、会見が紛糾する
*三宅記者の質疑内容は本人のブログを参照
*犬飼の質疑内容は横浜市 会見記録 参照。後述の不審点を中心に質問
・会見が紛糾したことを受けて、会見終了後にフリー記者2名(三宅、犬飼)が報道担当職員2名(佐藤部長、山下課長)へのヒアリングの場を急遽 設けて頂く
*詳細は後述
宴会の申請書から明らかになった不審点
情報開示請求によって入手した宴会に関する書類(申請書、通知、参加者一覧など100枚以上)をもとに筆者が各宴会の詳細(日時、場所、参加者など)を整理したところ、多くの不審点が浮かび上がりました。3月8日の記者会見で筆者はそれらの不審点を中心に質問しましたが、非常に情報量が多く、会見を視聴した方々にも全貌が伝わっていないと思われるので、以下にその一覧を示します。適宜、拡大表示してご確認ください。
©️2022 Jun Inukai
<一覧の注意事項>
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筆者が不審に感じた箇所は赤字で強調
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横浜・ラジオテレビ記者会との意見交換会(No3、9、11、17)はまだ申請書が開示されておらず、半年単位での実施期間と横浜市側の参加人数以外は全て不明
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指摘事項と直接的関係がない係長以下の名前はモザイクをかけて非公開とする
特に大きな違和感を感じたのは2点です。
No14〜15:2019年夏のカジノ誘致表明前後に明らかにイレギュラーな形で開催
まず、No14とNo15は2つの観点で、他の宴会とは異質です。
・開催間隔が短すぎる
他の宴会は約4ヶ月に1回のペースなのに、この時だけは わずか1ヶ月に2回も開催。しかも、林文子 前市長がカジノの誘致を突然表明して、全国的に注目を集めた 8月22日の記者会見を間に挟む形で実施している。
・横浜市側の参加者が少なすぎる
他の宴会は横浜市も記者クラブもそれぞれ10名前後が参加し、お互いの参加人数はほぼ同じ。しかし、この2回だけは横浜市は担当課長2名(渡辺将氏、野上和義氏)のみが参加。記者クラブ側の参加者はいつも通り10名程度なのに、横浜市側だけ参加者を一気に2人に絞っており、「意見交換会」と名乗るような人数バランスではない。
*例外的に毎日新聞が単独開催したNo4は横浜市の参加者は3名のみだが、毎日新聞側も同様に3名で参加しており、双方の人数を合わせている。
これらの点を踏まえて、2019年夏のカジノ誘致表明前後に行われた2回の宴会は、通常とは異なる目的で開催された可能性が非常に高いです。カジノ誘致に絡んだ情報提供、依頼が非公式に行われたのではないでしょうか。
No10、No13:人事異動で報道担当を離れた職員も参加
宴会を行うにあたっての申請書には開催理由として「記者と意見交換することで、円滑に業務を推進する」と毎回 記載されていました。
参考として、No13に該当する申請書を以下に示します。この他の申請書も理由(項番5の「接触の理由・必要性」)は全て同じ内容が書かれていました。
しかし、4月中旬~下旬に開催されたNo10とNo13は、4月1日付の人事異動ですでに報道担当を外れて、すでに異動先で別の業務を始めていた3名(海道亮輔 理事、矢野虎鉄 係長、伊藤聡彦 職員)もなぜか参加しています。開催時期が4月であることを踏まえると、「意見交換会」というより「歓送迎会」の意味合いが強かったと考えるのが自然です。歓送迎会では主賓(異動による転出者や転入者)を優遇(会費を安く設定、贈り物を用意、など)することは一般的であり、こうした配慮があった可能性もあります。
横浜市の主張
これらの不審な点(カジノ誘致前後にイレギュラーな形で2回の宴会が開催、異動で報道担当を離れた職員も宴会に参加)の理由について、筆者は3月8日の市長記者会見で山中市長および司会の佐藤広毅 報道担当部長に質問しました。佐藤部長は2019年に報道担当部長に就任し、不審な点が見られる全4回の宴会のうち、実に3回分(一覧のNo13〜15)の申請者であり、自らも2回(一覧のNo13、No16)参加。詳細を知っているはずの人物です。
参考までにNo14の申請後の通知文書を以下に添付します。右上の申請者の欄にはハッキリと佐藤広毅 報道担当部長の名前が記載されています。
しかし、佐藤部長は終始、筆者の質問に辻褄の合わない回答(申請したが内容は覚えていない、分からない、偶然そうなった、など)を繰り返しました。
会見が紛糾したため、この件を質問したフリー記者2名(三宅、犬飼)に対して、会見終了後に報道担当職員2名(佐藤部長、山下課長)が約1時間のヒアリングの場を急遽 設けて頂きましたが、それでも佐藤部長の記憶が戻ることはありませんでした。当日の記者会見および事後のヒアリングで確認できた佐藤部長の主な主張を整理すると、以下のようになります。
*手元に音声データはあるが、同じ内容の繰り返しが多いため要約のみ紹介
・自らが申請者である4回の宴会(2019年4月24日、同年7月29日、同年8月30日、2020年2月18日)について、企画者や幹事は誰か、会費の決定方法を何一つ把握していない
・上記4回の宴会の申請者は自分だが、申請書を書いたのは自分ではない。実際に申請書を書いたのは「部下の誰か」であり、その部下が誰だったのかすらも思い出せない
・従って、不審な点(カジノ誘致前後にイレギュラーな形で2回の宴会が開催、異動で報道担当を離れた職員も宴会に参加)として指摘された内容の詳細は一切わからない
埒が明かないので、我々(三宅、犬飼)としては、以下の内容を佐藤部長に依頼してヒアリングは終了しました。
以下2点を確認して、三宅・寺澤・犬飼に報告して頂く
・佐藤部長が申請者である4回の宴会(2019年4月24日、同年7月29日、同年8月30日、2020年2月18日)について、 企画したのは誰か、幹事は誰か、会費をどのように決定したかを他の参加者に確認
・カジノ誘致表明 前後の2回(20019年7月29日、同年8月30日)については、 開催間隔(通常は4ヶ月に1回ペースなのに1ヶ月に2回も開催)、参加者(通常は横浜市から10名前後が参加しているのに2名だけが参加)が明らかに他の宴会と異なる理由について、参加した担当課長2名(渡辺将氏、野上和義氏)に確認
認識のズレを防ぐため、これらの内容を筆者は翌9日に横浜市 報道担当に改めてメールしています。参考までに、その内容も以下に添付します。
©️2022 Jun Inukai
メール本文に書いた通り、この依頼事項は調査する意思さえあれば一瞬で終わる内容です。
関係者は基本的に全員が横浜市役所に残っている上、今も同じ部署に部下として在籍している宴会参加者もいるからです。そもそも、自らが申請者である宴会の基本的な内容を佐藤部長が全く把握していないこと自体が異常事態です。
今回の本編は以上になります。
横浜市 報道担当がこの依頼事項を期日(3月18日)までに対応するかどうかを含めて、関心を持ち続けて頂ければ幸いです。
「宴会なんて、どーでもいい!もっと大事な問題があるだろう!」と感じた方もいるでしょうが、ここ半年間ほど横浜市長記者会見に月1回ほど参加し続けた自分の意見としては、大問題です。大手メディアが実態とかけ離れた報道を続ける背景として、記者クラブと横浜市の馴れ合いの関係が強く影響しているように見えるからです。市長にふさわしくない人物が選挙で選ばれてしまった上、今も多くの市民がその問題に気づいていないことの根本原因と言って過言ではないでしょう。
同じ問題意識を感じた方は、ツイートやシェアで紹介をお願いします! リンク先を紹介するだけでなく、ご自分のコメントも交えて紹介して戴けると拡散しやすいので大変ありがたいです。
2022年3月10日 犬飼淳
以降は、この問題に関連する参考情報を掲載します。
参考:佐藤広毅 報道担当部長は宴会で飲酒をしたのか
3月8日の記者会見でフリー三宅勝久記者の「宴会で飲酒をしたのか」という基本的な質問に対して、なぜか佐藤広毅 報道担当部長は回答を頑なに拒んでいます。
「お酒そのものを飲んだかは覚えていない。飲み物は飲んでいると思う」
「部下が何を飲んでいたかは分からない」
(撮影:犬飼淳)
*ちなみに、この宴会が行われたのは2020年2月18日。つまり、ほんの2年前の宴会の飲酒すら思い出せないと平然と主張。薄々感じてはいたが、佐藤広毅 報道担当部長はなかなかの役者。
(撮影:犬飼淳)
参加した宴会で飲酒することはごく自然なことであり、飲酒の有無は問題の本質ですら ありません。それにもかかわらず、佐藤部長がここまで異様な反応を見せるのは、本人に後ろめたい何かがあることの証ではないでしょうか。
参考:コンプライアンス体制自体の問題
時間の都合上、3月8日の記者会見では指摘しませんでしたが、そもそも横浜市のコンプライアンス体制自体にも多くの問題が見つかっています。これらは情報開示請求によって明らかになった宴会の横浜市側 参加者と人事異動記録を筆者が照らし合わせたことで発覚しました。さらに、3月3日に実施したコンプライアンス関連部門とのヒアリングでも裏取りしています。
まず、利害関係者と宴会を行う場合の申請書の承認プロセスは大まかに以下の流れになっています。
(1)利害関係者との接触を伴う宴会に参加する場合は「利害関係者との接触に関する指針」の第4項「禁止行為の例外に関する手続き」に従い、所定の申請書を作成する
(2)所属する局区(横浜市は局や区などの組織が計46存在し、「局区」と総称)のコンプライアンス推進員(慣例的に各局区の総務部総務課長が任命)に申請書を提出して、承認を受ける
<申請書の例>
(3)各局区のコンプライアンス推進員(=総務部 総務課長)の承認後、総務局 コンプライアンス推進室は一覧形式になった承認結果を確認する。逆に言えば、よほどのことがない限り、コンプライアンス推進室では申請書自体はチェックしない。
<一覧の例>
2つの書類を見比べれば分かる通り、一覧には基本的な情報(宴会内容、横浜市側の参加人数、相手方、承認結果など)しか書かれておらず、申請書に書かれていた詳細な情報(日時、場所、相手方の参加人数、会費など)はありません。
つまり、横浜市全体のコンプライアンスを統括する立場にあるはずの総務局 コンプライアンス推進室は、各局区のコンプライアンス推進員(=総務部 総務課長)が承認した結果を受け取るだけの立場だと言えます。妥当性を二重チェックするどころか、判断に必要な情報すら知らないのです。
こうした背景を踏まえた上で、問題の宴会に参加した職員の異動歴を整理した表を以下に示します。適宜、拡大表示してご確認ください。重要な点は、今回も赤字で示しました。
©️2022 Jun Inukai
特筆すべきは、報道担当を務めた後、政策局 総務部 総務課長(=コンプライアンス推進員)に異動した人物(金島幸雄 課長)がいることです。つまり、この方は2016年度〜2018年度には報道担当として問題の宴会に自ら7回も参加した後、2019年度〜2020年度に報道担当の宴会の申請書を承認する立場だったのです。
さらに、金島幸雄氏が再び別の部署に異動した2021年4月に、まるで入れ替わるように別の人物(牟田口菜美子 担当係長)が政策局 総務部 総務課に異動しています。
*ただし、「係長クラスがコンプライアンス推進員を務めることはない」とコンプライアンス推進室の職員から確認できているため、宴会の申請書承認に直接的には関与していない可能性もあり
また、建前上は市役所全体のコンプライアンスを統括している総務局コンプライアンス推進室の担当課長は2019年度から現在に至るまで、報道担当として宴会に参加した人物(湊卓史)です。
*先ほども述べた通り、コンプライアンス推進室は各局区の承認結果を詳細には把握できていないため、報道担当の宴会申請への影響力は小さいと見られる
ちなみに、3月3日に横浜市のコンプライアンス担当者(総務局 コンプライアンス推進室、政策局 総務部 総務課)からヒアリングした際、現在もこれらの部署に所属している両名(湊卓史 課長、牟田口菜美子 係長)はなぜか出席しませんでした。総務局 コンプライアンス推進室からは湊課長の部下にあたる係長2名のみが出席。一方、政策局 総務部 総務課は課長が出席したものの、もう1名は牟田口係長とは別の係長が出席。
「かつて報道担当として問題の宴会に参加した当事者なのに、なぜ今日は出席していないのか」と当日の出席者に問いかけても、明確な理由は返ってきませんでした。
参考:癒着が疑われる記者クラブの一覧
現在の記者クラブ(横浜市政記者会、横浜ラジオ・テレビ記者会)のメンバーは以下の通りです。
*2021年8月の山中市長就任後の記者会見への参加者をもとに作成しているため、問題の宴会が行われた当時(2016年~2020年)のメンバーとは必ずしも一致しない点はご注意ください
参考:飲食店での聞き込みで得た確証
実は、フリー記者3名(三宅、寺澤、犬飼)は問題の宴会が行われた飲食店を訪問しており、複数の具体的な証言や確証を得ています。今後の横浜市と記者クラブの対応を踏まえて、これらは小出しに公開する予定です。
今回は、宴会が行われた飲食店と参加者の繋がりを証明する証拠写真の一部を紹介します。