処理汚染水 海洋放出から1週間の報道に潜むミスリード
*緊急性・公共性が高いと判断したため、冒頭の基本知識については公開直後から無料読者にも公開します。
*本記事では福島第1原発から海洋放出された水を「処理汚染水」と記載します。理由は後述の論点①を参照下さい
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この記事を書いた理由
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処理汚染水の海洋放出をめぐって、国内メディア(テレビ・新聞)の報道は政府東京電力の主張に基づく内容が大半を占め、海洋放出の是非を判断する上で重要な前提知識を知らない国民が多い
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その重要な前提知識を知らないままで「日本政府の決定は科学的で正しい」と信じてしまうと、諸外国と認識に大きなズレが生じてしまう
この記事で理解できること
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処理汚染水について、政府・東京電力が主張する「一般的なイメージ」と「現実」のギャップの大きさ
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8つの論点において、政府・東京電力が隠す重要な前提知識を国内メディアは報じたのか否か
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放出2~3日目から一斉に始まった、日中関係に問題をすり替える報道の露骨さ
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本質的な問題から目を逸らそうとするミスリード報道の各社ごとの特徴
海洋放出をめぐる「一般的なイメージ」と「実際」のギャップ
多くの反対の声を無視して、8月24日に福島第1原発からALPS処理汚染水の海洋放出が開始されました。
この判断をめぐって、政府・東京電力は「科学的根拠に基づいて、海洋放出する処理水は安全と確認できているから問題ない。将来的な廃炉に向けて、敷地を確保するためにも必要だ」という趣旨の主張を繰り返しており、国内メディアもその主張通りの報道が大半を占めています。
しかし、残念ながら政府・東京電力は海洋放出の是非を判断する上で重要な前提知識を巧妙に隠したり、誤解を招く表現でミスリードしています。そこで、処理汚染水をめぐる重要な8つの論点についてギャップを整理したのが以下のスライドです。
*政府・東電による「安全」という主張は青、NPO・市民団体等による「安全ではない」という指摘は赤、安全か不明という指摘は灰色で色分けして記載
©️2023 Jun Inukai
政府・東京電力の主張通りの報道によって多くの国民が抱いている「一般的なイメージ」(左側)と「現実」(右側)には大きなギャップがあることが分かります。
*各論点のさらに詳細な説明は FoE Japan「【Q&A】ALPS処理汚染水、押さえておきたい14のポイント」(2023年8月1日作成、同年8月21日更新)参照
全体を通して、議論の対象をあえて限定する(例:論点①でトリチウムだけに着目して「処理水」と主張、論点④で限定的な条件のトリチウム排出濃度基準を無理やり適用 等)、不都合な情報は徹底的に公開しない(例:論点②でタンクに残留する放射性物質の総量を明かさない、論点④で希釈する海水そのものに汚染の可能性がある、論点⑤で安全な代替案の存在自体を隠す 等)、偽りの大義名分を掲げる(例:論点⑤で廃炉のために必要と主張 等)などの詐術によって、現実とかけ離れたイメージをつくり上げています。
*希釈する海水自体が汚染している実態は、おしどりポータルサイト「「ALPS処理水」海洋投棄に関係なく、現在進行形の福島県沖の魚のセシウム汚染を東電も国も解決できず」(2023年7月15日)参照
本来であれば、こうした不正確な主張の問題点や矛盾を指摘するのが「報道」の役割ですが、テレビ・新聞を始めとする国内メディアの大半は残念ながら政府・東電の不正確な主張を垂れ流すだけの「広報」に徹しました。さらに、本質的とは思えない観点(日中関係、「食べて応援」キャンペーン 等)の報道量を圧倒的に増やし、問題の本質から国民の目を逸らしている面もあります。
そこで今回のニュースレターでは、放出から1週間の国内メディアの報道を様々な観点で定量的に検証し、そのミスリードの異常性を浮き彫りにしていきます。
©️2023 Jun Inukai *詳細は本編で説明
©️2023 Jun Inukai *詳細は本編で説明
©️2023 Jun Inukai *詳細は本編で説明
本編の目次
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処理水か? 汚染水か?
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8つの論点において、国内メディアは政府・東電の問題・矛盾を指摘したのか
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国内メディアが黙殺した、中国以外の国の抗議
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放出後1週間の報道の検証 ~放出2~3日目から各社一斉に始まった日中関係へのすり替え~
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