役人の隠蔽(2)インボイス事業者公表サイトの仕様変更記録が一切存在しない国税庁
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この記事を書いた理由
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行政文書の開示請求は、国民の「知る権利」を守る重要な手段である。行政機関(官公庁、自治体 等)の情報公開の透明性が落ちた昨今、その重要性は一段と増している
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しかし、あり得ない理由で開示請求を妨害する事例が後を絶たず、役人にとって不都合な情報は容易に隠蔽されている
この記事で理解できること
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与党議員が成果として大々的にアピールしたはずのインボイス事業者公表サイトの改修は実際はどのように進められたのか
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突然のダウンロード停止の記録が存在しない理由
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仕様変更の記録が存在しない理由
先月より開始した「役人の隠蔽」に焦点を当てたシリーズ企画の第2回として、インボイス発行事業者公表サイト(以降、「公表サイト」)の氏名を含む個人情報の全件ダウンロードに関連した本名バレ・居場所バレ問題を取り上げます。昨年9月に与党議員の要望後に国税庁が迅速に対応して解決したとされていましたが、実際は国税庁の対応がザル過ぎて解決していないことが発覚。今年2月3日の超党派議連ヒアリングで技術者が解説映像を交えて問題点、原因、改善策まで詳細に説明したにもかかわらず、その後も国税庁は問題を理解できないフリをしてまで改善対応に応じないという異様な状況が続いています。
*この問題を筆者は1年近くにわたって繰り返し報じており、前提知識が無い場合は配信済みの以下3本の記事を適宜ご参照ください。
*本名バレ・居場所バレに繋がる欠陥の詳細(芸名の俳優・声優と取引する日本俳優連合の実務に基づいて解説)
*超党派議連ヒアリング(今年2月3日)での技術者の具体的提言の詳細
*上記の提言を受けても問題を放置する国税庁の最新見解。本編はサポートメンバーのみ購読可
こうした異様な状況を踏まえると、昨年9月に表向きには問題解決を印象付けた公表サイトの改修(全件ダウンロードを一時停止し、4日後に仕様を変更してダウンロードを再開)はいったい何だったのかという疑問が改めて湧いてきます。
前後の出来事を時系列で振り返ると、以下のようになります。
2022年6月
手前味噌ながら筆者の記事や動画の影響もあり、公表サイトは氏名(本名)公開が必須、全件ダウンロード可能という衝撃的な仕様であり、芸名・ペンネームで活動するクリエーター等の本名バレに繋がる問題が徐々に認知され始める
2022年3月16日 参議院財政金融委員会 自民党・ 藤末健三
#漫画 #イラスト #映画
5分28秒〜
youtu.be/TW25DcEcYSI?t=…
#インボイスまだ止められる
インボイス制度導入で「あの漫画家の本名がバレる」は本当か? | 集英社オンライン
shueisha.online/culture/23957 インボイス制度導入で「あの漫画家の本名がバレる」は本当か? | 集英社オンライン | 毎日が、あたらしい 2023年10月1日より導入されるインボイス制度。これについては実質的増税による収入減少、取引機会の喪失、無駄な事務処理 shueisha.online
2022年7月
さらに、事業者の個人情報が商用利用可能なコンテンツとして明文化されていることも問題視されるようになり、各団体が連名で抗議声明を発表する事態に発展
インボイス発行事業者として登録した個人事業主の本名と登録番号が、商用利用可能な「コンテンツ」として国税庁HPから全件ダウンロードできる問題に対し、当事者団体の連名で抗議声明を発表します。
#私の名前はコンテンツじゃない
インボイス発行事業者として登録した個人事業主の本名と登録番号が、商用利用可能な「コンテンツ」として国税庁HPから全件ダウンロードできる問題に対し、当事者団体の連名で抗議声明を発表します。
#私の名前はコンテンツじゃない
2022年8月8日
弁護士の宇都宮健児氏が共同代表を務める市民団体「公平な税制を求める市民連絡会」(以降、「市民連絡会」)がインボイス制度の見直しを求めて財務省・国税庁に申し入れ。個人情報漏洩の問題についても改善を求めたが、国税庁は個人のプライバシーよりも大企業の利便性を優先する考えを示した上で、「見直す予定はない」と断言。
*当日の質疑の詳細は、申し入れに同席した筆者の集英社オンライン記事「財務省が衝撃の回答。“本名バレ”不可避でもインボイス制度を導入する「本当の理由」」(2022年9月10日)参照
2022年9月10日
本名バレ・居場所バレが起きる仕組みを具体的に解説した記事を筆者が集英社オンラインに寄稿。問題の深刻さがさらに広く認知される。
前編では本名バレ・住所バレの仕組みを解説し、芸名・ペンネームで活動するクリエーター、本名を知る相手から逃げる個人事業主、有名人(Jリーガー等)が受ける被害を明らかにします。
shueisha.online/culture/52899 氏名も住所も全世界に公開! インボイス制度導入で「あの漫画家の本名がバレる」は、やはり本当だった | 集英社オンライン | 毎日が、あたらしい 2023年10月1日より導入されるインボイス制度によって、ペンネームや芸名で活動するクリエーター(VTuber・YouT shueisha.online
”このインボイス制度は、ペンネームや芸名で活動するクリエーター(VTuber・YouTuber・漫画家・作家・アーティスト・俳優・声優 等)の本名を含む個人情報を、国税庁がウェブサイトで全世界に公開し、誰でも全件ダウンロードできる上、商用利用も可能"
shueisha.online/culture/52899 氏名も住所も全世界に公開! インボイス制度導入で「あの漫画家の本名がバレる」は、やはり本当だった | 集英社オンライン | 毎日が、あたらしい 2023年10月1日より導入されるインボイス制度によって、ペンネームや芸名で活動するクリエーター(VTuber・YouT shueisha.online
2022年9月22日
自民党・赤松健議員(与党議員としては珍しくインボイス反対を掲げて2ヶ月前の参院選で初当選)および山田太郎議員が公表サイトの個人情報漏洩問題について国税庁に申し入れ。同日中に国税庁は全件ダウンロードを停止
invoice-kohyo.nta.go.jp/download/index…
今後の対応は、週明けに改めて国税庁に確認した上で各団体に報告します。国税庁の早めな対応は評価しますが、まだまだ最初の一歩。今後も気を緩めず行きます!
2022年9月26日
国税庁が公表サイトで全件ダウンロード可能なデータから個人情報(氏名・所在地・屋号等)を抜いて公開を再開
*前月の市民連絡会の同様の申し入れには聞く耳を持たなかった一方、与党議員の申し入れに対してはわずか4日で対応
invoice-kohyo.nta.go.jp/download/index…
この形でも登録番号の有効性は確認できる上、webAPI(認証を強化)は生きていて企業も困らないはず。
さらに、上記ツイートのわずか1時間後、まだ具体的な改善方法すら不明の段階で朝日新聞(堀之内健史記者)はあたかも本名バレが解決するかのような誤解を招く以下の記事を配信。
*報道の異様な早さから判断して、事前に国税庁または与党からリークがあったと見られる
*朝日新聞は2023年4月現在に至るまで認識不足に基づく上記の記事を一切訂正していない。問題は全く解決していないと技術者が告発した超党派議連ヒアリング(翌2023年2月3日)の存在も無視し続けている
このように非常に奇妙な展開を辿ったため、「インボイス反対を掲げて参議院選挙に当選した自民党 赤松健議員は、インボイスの理解が浅い大手メディア記者を利用して個人情報問題の改善を大々的に演出することで、むしろインボイス導入を後押ししたのでは?」という疑念を筆者も含めて多くの方々が抱き、その懸念は的中したと言えます。
「税の押し付け合い(しかも弱い立場が押し付けられやすい)」と「事務負担の膨大な増大」です。
丸一日が経過しても、具体的な改善方法は一切明かされていないことに。
私は↓のような超部分的な改善でお茶を濁すと予想しているけど、これすらも確約はされていない。
だからこそ、一時的措置に過ぎないダウンロード停止を国税庁は朝日新聞等にリークし、大々的に報じさせたのではないか。
asahi.com/articles/ASQ9Q… サイトに本名ずらり、国税庁が見直しへ インボイス、身バレ懸念受け:朝日新聞デジタル 消費税の「インボイス制度」に登録した個人事業主の名前などの公表方法について、国税庁が見直す方針を決めたことが同庁への取 www.asahi.com
結局、9月22日の与党議員による申し入れでいったい何が話し合われたのか?
その直後の全件ダウンロード停止は誰が判断したのか?
4日間かけて行われた、(後にザルと発覚する)公表サイト改修はどのように進められたのか?
これらの疑問を明らかにするため筆者が開示請求したところ、国税庁はまさに「ありえない」理由で不開示を決定。今回のニュースレターでは、その「不開示理由」と「国税庁職員への個別の聞き取り」で浮き彫りになった、ありえない理由に頼ってまで情報を隠すしかない国税庁の実態をお伝えします。
後半の目次
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国税庁への開示請求内容
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絶対に存在するはずの文書がまさかの「不存在」
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突然のダウンロード停止の記録が存在しない理由
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仕様変更の記録が存在しない理由
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