【信号無視話法】山中竹春 横浜市長 記者会見 (2021年11月9日)
こんにちは。犬飼淳です。
10月13日に自ら参加した横浜市長記者会見では、真っ先に挙手しても、自分一人だけが挙手している状況であっても、1時間弱にわたって山中市長に実質的に指名拒否されるという衝撃的な体験をしましたが、懲りずに約1ヶ月後の11月9日の記者会見にも参加してきました。
前回の反省を活かして、自分1人だけが挙手している証拠を残すために私が360度カメラを持ち込む暴挙に出た効果もあったのか、今回は2回も指名して頂き、2つのテーマ(ワクチン接種率の誤発表、カジノ住民投票署名の目的外使用)について質問できました。
*約40分間の会見の流れは以下スライド参照
©︎2021 Jun Inukai
残念ながら私の日本語は山中市長にほとんど通じない様子だったものの、いくつか新たに確認できたこともありました。そこで今回のニュースレターでは、この2つのテーマに関するやり取りをピックアップして、一字一句漏らさずにノーカットで検証していきます。具体的には、信号機のように3色(青はOK、黄は注意、赤はダメ)で直感的に視覚化します。
*通常であれば視覚化した結果をもとにYoutube動画も制作していますが、今回はマンパワー不足により割愛します。実際の映像は横浜市が公開する当日分の録画映像でご確認ください。(ワクチン接種率 誤発表は映像の17分30秒〜、カジノ住民投票署名の目的外使用は映像の43分10秒〜)
配色ルール
この配色ルールに従って、回答内容を色分けしていきます。
©︎2021 Jun Inukai
集計結果
©︎2021 Jun Inukai
山中市長の回答を集計した結果、上記の円グラフのようになりました。赤信号と黄信号が6割以上を占めており、ほとんど質問に答えていません。また、不要な言葉を意味する灰色が16%もあり、言い澱みが多いことも伺えます。
いったいどのような質疑だったのか詳しく見ていきましょう。
質疑(ワクチン接種率の誤発表)
冒頭に市長が発表した内容(ワクチン接種率の進捗、横浜こどもホスピス開所)に関する質疑が始まり、幹事社の直後の2番目に私を指名を受け、前々回(10月13日)会見の市長のワクチン接種率についての誤った発言「国の平均よりも横浜市はワクチン接種率が10%高い」を訂正する意思があるのかを質問します。
©︎2021 Jun Inukai
©︎2021 Jun Inukai
私は質問の角度を変えながら3回にわたって質問しました。しかし、国と横浜市のデータは定義が異なるので単純比較できないことを指摘しても、提示資料は何の補足説明にもなっていないことを指摘しても、市長自身が「都合の良い数値を取り出すのは不誠実だ」と過去に発言した事実を突きつけても、山中市長はワクチン接種率の定義の違いを述べ続けるだけで、質問と回答が噛み合うことは一度もありませんでした。
さらに、冒頭に示した「会見の流れ」を見れば分かる通り、これだけ日本語が噛み合わない質疑が目の前で繰り広げられたにもかかわらず、私の後に続いた記者は6名連続で当日のもう1つのテーマである横浜こどもホスピスについて質問。
今日はワクチン接種率の誤発表についての進展は無しかなと諦めていたのですが、その後に9番目の質問者である毎日新聞 樋口記者が私の質疑を引き継ぐ形で質問してくれて、わずかながら状況が前進します。
©︎2021 Jun Inukai
結果、最後にようやく「10月13日の発言時は単純比較できないデータだと認識していなかった」と市長は認める発言をしています。しかし、それでも訂正については遂に言及しませんでした。
参考(ワクチン接種率の誤発表)
この質疑を理解する上で、参考になる情報を以下に列挙します。
10月13日記者会見の会見記録
冒頭のワクチン接種率についての「国の平均、国の数字よりも10%高いところまで、横浜市においては10%位高いところまできているところ」という明らかに誤った市長発言がそのまま記載されています。注釈をつけて、補足説明として「ワクチン接種率の算出方法は横浜市新型コロナウイルス対策本部会議資料(P24~29)で公開」と書かれていますが、この会議資料には「市と国のデータは定義が異なるため単純比較できない」という旨が書かれているだけであり、何の補足説明にもなっていません。むしろ単純比較できないデータを山中市長はまさに単純比較して「10%高い」と発言したわけですから、自らの首を絞めていると言えます。
10月18日 市議会での確認を通して入手した会見原稿
10月18日の決算第二特別委員会(山中市長は出席していない)で無所属・井上さくら市議は会見を所管する政策局長らにこの問題を質問し、会見原稿を入手。「国より横浜市が10%高い」という内容は原稿に一切書かれておらず、山中市長自らが付け加えて発言したことが明らかになりました。つまり、この件の全ての責任は職員ではなく、市長にあります。
1,市長用原稿
2,参考資料
職員作成の原稿には国との比較という誤情報は含まれず。
参考資料には国・県の数字があるがそれぞれ全世代(0歳〜)、(12歳〜)と明記され性格の違う数値であることは明らか。
10月21日 横浜市新型コロナウイルス対策本部会議資料 P24〜29
先ほどの質疑要旨で補足説明として紹介された資料。「国・神奈川県の接種率については、それぞれ分母・分子の根拠が異なるため単純比較はできません」という内容が5ページにわたって説明されているだけ。分母については、国は全世代に対して、横浜市は12歳以上に限定されており、横浜市は分母が小さくなります。分子については、国は医療従事者が含まれない等の違いがあり、横浜市は分子は大きくなります。横浜市の方が分母は小さく、分子は大きい算出式のため、当然ながら割り算の結果(=ワクチン接種率)は横浜市の方が高くなることは当然です。小学生レベルの割り算を理解できれば、分かる話です。
10月27記者会見の出来事
誤発表をした10月13日会見の次に開催された10月27日会見に私は都合により参加できませんでしたが、データの専門家である山中市長が明らかに誤った内容(しかも定性的な内容ではなく、定量的な数値)を発表したのだから、次の会見で記者たちは当然質問するだろうと私は信じていました。
・・・・しかし、不気味なことに横浜市政記者会に所属する大手メディアの記者たちはこの話題に一切触れようともせず、最新のワクチン接種率やワクチンPlusキャンペーンについての質問を繰り返しました。 *当日の内容は会見記録を参照
前回会見でワクチン接種率の数字が誤っていた件を追及する記者が当然いると思っていたけど、会見内容を確認した限りでは誰も指摘すらしていない。
一方、的外れなワクチンplusキャンペーンについては、特色やら経済効果やら企画者やらをご丁寧にアシスト質問。
市長のデータ分析に関する過去発言
質問中に引用した山中市長自身の発言「都合の良い数値を取り出すのは不誠実」は、つい4ヶ月前の市長選挙のPR動画での言葉です。データの専門家である山中市長は過去にデータの比較手法について見解を述べている可能性が非常に高いと考えて探した結果、あっさりと見つかりました。いわゆるチャンピオンデータ(都合の良いデータ)に関する見解を述べる中で出てきた言葉ですが、山中市長の場合はチャンピオンデータ以前にそもそも比較すべきでないデータを比較して結論を導いたわけですから、さらに悪質と言えます。
質疑(カジノ住民投票署名の目的外使用)
一般質疑(冒頭に説明したワクチン接種率、横浜こどもホスピス開所以外のあらゆるテーマの質問を受け付ける時間帯)に入った後、私は再び質問の機会を得て、ここ1ヶ月で大きな動きが幾つかあったカジノ住民投票署名の目的外使用について質問します。
©︎2021 Jun Inukai
1問目「横浜市長選挙でカジノ住民投票署名を目的外使用したのは事実なのか?」は「議会で答弁した通り(=山中市長自身はそうした事実は認識していない)」という従来通りの回答でしたが、逆に言えば山中市長が認識していないところで目的外使用された可能性は否定できないという意味も含んでいると私は理解しています。使用されていないと断言できるのならば「目的外使用はしていません」と断言するはずなので。
また、先月下旬に立憲民主党・篠原豪氏が自らの衆院選に名簿を不正流用した疑惑が報道されたことを受けて、2問目では「報道を受けて、どのような確認をしたのか」を私は質問。目的外使用について本当に何も知らなかったのであれば、普通に考えれば報道を受けて自らの市長選挙でも目的外使用された事実がなかったか確認をとるのが自然なので。
しかし、山中市長の回答は「特にコンタクトはしていない」とのこと。本当に何も知らなかった人物の行動としては、疑問が残る内容でした。
参考(カジノ住民投票署名の目的外使用)
この質疑を理解する上で、参考になる情報を以下に列挙します。
10月6日 市議会での追及
この問題を初めて議会で取り上げたのは自民党の草間剛市議。10月6日に約5分間に渡って山中市長を追及しています。
【自民党】が正論で【立憲民主党】の悪事を糾弾するほど異常なのが、今の横浜市会。
動画の58分2秒〜1時間3分頃
youtu.be/HzSbBjvcpCY?t=… 【1】R3.10.6草間 剛委員(自民)x山中市長◆決算第一・決算第二特別委員会連合審査会(字幕は自動のものです) (字幕は自動のものです)【1】R3.10.6 横浜市会 連合審査会 総合審査 ◆草間 剛委員(自民)x山中市長◆決算第一 youtu.be
10月26日 FLASH報道
立憲民主党・篠原豪氏(横浜市が地盤の国会議員として、市長選挙では山中陣営の中心に近い立場にいたと考えられる)による署名の不正流用は以下の記事が報じています。報道されたのは衆院選の投開票(10月31日)の5日前というタイミングでしたが、後追い報道が出ることもなかったためか大きな打撃にはならず、篠原氏は出馬した小選挙区(神奈川1区)で危なげなく当選を果たしています。
立憲民主党が進めた住民投票の不可解さ
これは個人的な感情や推測も含みますが、私はかねてより約1年前に「カジノの是非は住民投票で決める」という耳障りの良いキャッチフレーズで署名集めを進めた立憲民主党 神奈川県連合の動きに不信感を高めていました。
リコールの署名集めも今月から始まっている中、市民が混同するリスクの方が大きいのでは?
なぜならば、カジノを推進する自民・公明が過半数を占める横浜市会でこの住民投票が否決されることは十分に予想できたこと。そして、2021年1月8日に予想通りあっさりと議会で否決された後、住民投票を進めていた立憲民主党・共産党はまるで無かったことのように一切触れなくなります。いったい、何のために市長リコールの時期とかぶせて混乱を招いてまで、実施される見込みのない住民投票に拘り続けたのか不思議で仕方がありませんでした。
賛成51名:自民35、公明16
反対34名:立憲・無所属フォーラム20、共産9、他5
なぜか市長リコールではなく住民投票の署名集めに邁進した立憲・共産にも強い疑念を感じます。
しかし、今回の一件(住民投票署名の目的外使用)が明らかになったことで、1年がかりの私の疑問は遂に解消されるかもしれません。つまり、あまりにも救いようがない話ですが、立憲民主党が実施される見込みのないカジノ住民投票署名に拘り続けた理由は、選挙活動に利用して党勢拡大するためだった、と。
さすがに関わった国会議員や市会議員の全員が同じ動機だったかは分かりませんが、署名簿を自らの選挙に不正流用することが大きな目的だった人物がいたことは確かでしょう。現時点で疑惑が報じられているのは篠原豪氏1人ですが、「住民投票に署名しただけなのに、これまで個人情報を提供した覚えのない立憲民主党の他の国会議員から衆院選前にハガキなどが届いた」という声は私のもとにも複数届いています。その差し出し人は、主に横浜市内を地盤とする立憲民主党の国会議員の名前が複数 挙がっています。その多くは今回の衆院選で当選しており、今も国会議員の身分を保持しています。しかし、当選にあたって住民投票署名を不正流用していたことが明らかになった場合、党全体を揺るがすほどのスキャンダルへ発展するでしょう。
今回のニュースレターは以上になります。
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また、このニュースレターの読者の中には野党による政権交代を望んでいる方が多くいるでしょうから、今年7月から10月にかけて横浜市政における野党共闘の矛盾や問題をしつこく発信してきた私のことを疎ましく思っていた方も多いと思います。短期的に見れば今秋の政権交代に水を差す内容に見えたでしょうから。ただ、衆院選が終わり、野党共闘による政権交代は今後さらに数年間はかかると明らかになった以上、中長期的に見れば、こうした問題を拡散することはより盤石な政権交代の後押しに繋がると私は考えています。
2021年11月14日 犬飼淳
P.S.
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