【内部告発】電通の東京五輪汚職再び。横浜市中計策定を4回連続で不公正に随意契約(1)

東京五輪直後の2021年10月から2022年12月にかけて、横浜市は中期計画策定業務を4回連続で入札無し(随意契約)で電通に委託。東京五輪と同じ構図で電通が税金を食い物にした実態を、内部告発者の情報提供および開示文書14点(全177枚)に基づいて公表します。
犬飼淳 2023.03.22
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*2月中旬に内部告発を受けて以降、1ヶ月以上を要した事実関係の膨大な確認(開示請求、開示文書177枚の精査、関係者の認識確認)がひと段落したため、公開に踏み切りました。

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この記事を書いた理由

  • 東京五輪汚職の原因の一つは、運営主体の組織委員会が「公益財団法人」であったこと。自治体と異なり情報公開の透明性が落ちるため、内部を牛耳る電通の中抜きや贈収賄をチェックできなかった。2027年に花博を控える横浜市も2021年に「公益財団法人」国際園芸博覧会協会が設立され、東京五輪と同じ問題がすでに発生している

  • こうした状況を憂慮する関係者から筆者に内部告発があり、東京五輪直後の2021年10月から2022年12月にかけて「中期計画策定をめぐる業務委託」で、東京五輪と同じ構図で電通が横浜市の税金を食い物にした事実が発覚した

この記事で理解できること

  • 正当な理由もなく、なぜ横浜市は電通に入札無し(随意契約)で業務委託できたのか

  • 内部で4回連続の随意契約を疑問視する声があったにもかかわらず、反対の声をどのように封じ込めたのか

  • 横浜市と電通の癒着を放置すれば、2027年まで毎年数百億円単位の予算が計上され続ける花博で市民の税金がいかに不透明に浪費されるか

***

筆者は自らも横浜市民であるため、継続的に横浜市長記者会見に参加してきました。そんな筆者のもとに先月、非常に具体的な内部告発が届きました。

それは、昨年12月に確定した「横浜市中期計画2022〜2025」 をめぐって、横浜市と電通が結んだ業務委託契約に公正さを疑う内容が多数あることを示していました。

<a href="https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/koho-kocho/press/seisaku/2022/0623chuki.html">横浜の未来を担う学生と山中竹春市長による「2040年 横浜未来対話」</a>(2022年6月26日 横浜市庁舎31階 レセプションルーム)  の一場面。 <b>*当日の企画・運営は、今回問題が発覚した電通への一連の業務委託の一部</b>

横浜の未来を担う学生と山中竹春市長による「2040年 横浜未来対話」(2022年6月26日 横浜市庁舎31階 レセプションルーム)  の一場面。 *当日の企画・運営は、今回問題が発覚した電通への一連の業務委託の一部

同日、参加した市内の大学生8名と山中市長の記念撮影 <b>*ファシリテーター等の当日運営を一任されたはずの電通関係者は横浜市が公開した写真には一切映っていない</b>

同日、参加した市内の大学生8名と山中市長の記念撮影 *ファシリテーター等の当日運営を一任されたはずの電通関係者は横浜市が公開した写真には一切映っていない

詳細な情報提供にもとづいて筆者が中期計画策定の業務委託に関係する文書14点を横浜市に開示請求したところ、無事に全177枚の文書が開示。結果、内部告発者の指摘通り、東京五輪と同じ構図で横浜市と電通が癒着していた実態が詳細かつ具体的に露見しました。

東京五輪汚職との共通点

東京五輪と今回の横浜市の共通点を簡単に整理すると、以下のようになります。

(上段:東京五輪、下段、横浜市)

©️2023 Jun Inukai

©️2023 Jun Inukai

まず、スライド左側の「受注プロセス」で両者を比較してみましょう。

東京五輪をめぐる不正はあまりにも数が多くて2023年3月現在も未だに金額等の全貌は不明ですが、先に小規模なテスト大会の運営を受注して、その小さな実績を根拠に後続の大型案件(本大会)の運営を随意契約(入札無し)で受注したことが大きな特徴です。

*本来、自治体や官公庁の契約先決定は競争入札が大前提。ただし、「随意契約」では、例外的に競争入札無しで契約相手を決定できる。手続き簡素化等のメリットがある反面、透明性が落ちて不正の温床になるため、随意契約を認める理由(災害対応等で緊急要件を満たす企業が1社、等)は限定されている

今回発覚した横浜市でも、カラクリは全く同じです。2021年10月、表向きには「外部有識者との意見交換会」の体裁をとりつつ、実際に招いた「外部有識者」は4名全員が電通。実態は企業側からのセールスの場だったにもかかわらず、逆に横浜市側から電通に対して謝金(報酬)まで支出。この意見交換会の実績を根拠に、後続の中期計画策定支援業務を4回連続で電通と随意契約したのです。

ちなみに2021年10月は、東京五輪閉幕と山中竹春市長就任の翌々月。新たな稼ぎ先を探していた電通が、市長が交代したばかりで6年後に大規模イベント(花博)の実施を予定する横浜市を狙ったと見られます。

加えて、スライド右側の「運営主体の組織体制」の問題も指摘しておきます。

今回の横浜市 中期計画策定で判明した金額(計1958万円)は東京五輪と比較すれば桁違いに少額です。しかし、花博も考慮すれば、今後数年間にわたって東京五輪並みの莫大な税金を電通が不当に横浜市から搾取する恐れが高いです。

東京五輪汚職の原因の一つは、運営主体の組織委員会が公益財団法人だったこと。自治体と異なり情報公開の透明性が落ちるため、内部を牛耳る電通の中抜きや贈収賄をチェックできませんでした。2027年に花博を控える横浜市も2021年に「公益財団法人」国際園芸博覧会協会を設立。すでにお金の流れはブラックボックスとなっています。

井上さくら(横浜市議・無所属)
@sakuraline
花博を主催する協会
expo2027yokohama.or.jp

去年ここが設立され市から実務が移行したら得られる情報がグッと減った。
外部委託調査の結果報告書等も非公開。

国でも自治体でもない組織にする「メリット」の一つ

税金投入する事業なのにブラックボックス。
前の横浜開港博Y150も、東京五輪もそう。
公益社団法人2027年国際園芸博覧会協会【横浜・上瀬谷開催】 2027年、旧上瀬谷通信施設(米軍施設跡地)で国際園芸博覧会を開催します。テーマは、「幸せを創る明日の風景」。国際的な園 expo2027yokohama.or.jp
2022/05/14 22:30
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井上さくら(横浜市議・無所属)
@sakuraline
花博主催の協会トップは経団連会長で知事や市長が役員で事務局には横浜市職員が大勢派遣されているけど
実際は広告代理店に丸投げ

そして、予想通り電通

企画検討業務も
expo2027yokohama.or.jp/wp-content/upl…

広報・PRも
expo2027yokohama.or.jp/wp-content/upl…

それで色々非公開じゃ
中抜きされてもチェックしようがない💦
井上さくら(横浜市議・無所属) @sakuraline
花博を主催する協会 https://t.co/syJtOsqF3f 去年ここが設立され市から実務が移行したら得られる情報がグッと減った。 外部委託調査の結果報告書等も非公開。 国でも自治体でもない組織にする「メリット」の一つ 税金投入する事業なのにブラックボックス。 前の横浜開港博Y150も、東京五輪もそう。
2022/05/14 22:43
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このような不透明な状況にもかかわらず、花博は2023年度当初予算だけでも上瀬谷跡地の整備等で150億円を計上。今後も年間数百億円規模の莫大な予算を計上していく見込みのため、東京五輪と同じ構図で横浜市民の税金が食い物にされることが確実視されます。

横浜市の暴走を止めるため、市民団体は昨年5月に3万5千筆の花博反対署名と共に山中市長に公開質問を提出。しかし、筆者自らが市長記者会見で継続的に質問した結果、山中市長は公開質問を読んですらいないと判明。山中市長の市政に対する無関心ぶりが改めて露呈しました。

また、東京五輪談合事件を受けて横浜市も他自治体に倣って今年2月14日に指名停止措置を発表。しかし、指名停止期間は東京都や大阪市の1年に対して、横浜市はわずか半年で今年8月13日には解除。指名は年度単位で行われることが多いため、影響を全く受けずに今後も電通を指名する案件が出てしまうことが見込まれます。

*横浜市の基準が甘い理由は井上さくら市議のツイート参照

***

癒着の全体像

実は、「公益財団法人」設立前の「自治体」として見ても、横浜市の情報公開の透明性は極めて低いです。筆者を含む市民が繰り返し開示請求しても、絶対に存在するはずの業務記録(決裁文書、議事録、業務指示、等)さえも「口頭連絡のため不存在」等のありえない理由で非開示決定することが常態化。筆者がこれまでに開示請求した他自治体(東京都、世田谷区、等)と比較しても、横浜市の行政のデタラメぶりは異次元と断言できます。自治体としては巨大過ぎる(人口376万人は2位 大阪市に約100万人の大差)ことを背景にもともと不正が横行していたことに加えて、徹底的に市民に無関心で倫理観も低い市長が一昨年に誕生してしまったことで事態はさらに悪化し続けています。

しかし、今回は内部告発者から極めて詳細な情報(文書番号、文書名、主管部門 等)が提供されたため、さすがに横浜市も筆者が開示請求した文書14点を全て開示。ごく一部(電通側担当者のメールアドレス等)が黒塗りされたことを除いて、完璧な状態で全177枚の文書を入手できました。

筆者が入手した開示資料14点(全177枚)

筆者が入手した開示資料14点(全177枚)

正当な理由(災害対応等で緊急、要件を満たす相手が1社、等)は無いのに、なぜ横浜市は電通に入札無し(随意契約)で業務委託できたのか。

横浜市役所内部で4回連続の随意契約を疑問視する声が度々あがったにもかかわらず、反対の声はどのように封じ込められたのか。

電通が提示した見積書がいかに矛盾だらけで、ぼったくり同然だったのか。

この不公正な契約を推し進めた横浜市のキーパーソンは誰だったのか。

これらの疑問の答えは、「内部告発」と「177枚の開示文書」という明確な証拠によって全て明らかになりました。

©︎2023 Jun Inukai

©︎2023 Jun Inukai

©︎2023 Jun Inukai

©︎2023 Jun Inukai

©︎2023 Jun Inukai

©︎2023 Jun Inukai

©︎2023 Jun Inukai

©︎2023 Jun Inukai

177枚の開示文書のうちの1枚。電通が提示した見積書の一例。他の契約書類(仕様書、内訳書、随意契約理由書)と比較すると<b>不審点・矛盾点が多数</b>あり、横浜市と電通の間で<b>ぼったくり同然の見積が横行している証左</b>となった

177枚の開示文書のうちの1枚。電通が提示した見積書の一例。他の契約書類(仕様書、内訳書、随意契約理由書)と比較すると不審点・矛盾点が多数あり、横浜市と電通の間でぼったくり同然の見積が横行している証左となった


これ以降、癒着の全貌を詳細にお伝えしていきます。

*深く関与した電通社員・横浜市職員は実名・顔出しで掲載します。

本編の目次

  • 2021年10月 全ての始まり「外部有識者との意見交換会」  〜招かれた4名は全員電通

  • 2021年11月 山中市長との2回のセッション 〜市長行動記録で電通との接触自体を隠蔽

  • 2021年12月〜翌1月 作成支援業務を入札無しで電通に委託 〜反対の声でいったん否決後、電通以外を排除する恣意的な条件追加でスピード決裁〜

  • 2022年1月 ヨコハマ未来戦略委員 設置 〜9名中4名が電通〜

  • 2022年5月 策定・発信支援業務も入札無しで電通に委託 〜再び疑問の声があがるも「要件を満たす事業者は電通以外にいない」とゴリ押し〜

  • 癒着疑惑に対する関係者(電通、横浜市)の認識

*今回は完全独自の取材に基づいており、続きはサポートメンバーのみに公開します。通常と異なり一定期間経過後も無料読者には公開しません。

*177枚の開示文書で明らかになった内容は包み隠さず記載したため、質・量ともに通常のニュースレターの10倍程度あります。文字通り桁違いなため、お時間がある時にお読みください。

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