ジャニーズ性加害の背景。「ジュニアの経済的困窮」と「芸能界の元ジュニア排除」

ジャニー喜多川氏による性加害問題。筆者が10年以上前に当事者から見聞きした内情に基づいて、背景にある「事務所の待遇」と「芸能界の構造」を労働環境・人権問題として指摘します。
犬飼淳 2023.07.24
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この記事を書いた理由

  • ジャニーズ事務所でのジャニー喜多川氏による性加害問題では、加害者と被害者の1対1の関係性(当事者間では信頼関係が成立していた 等)に着目して、問題を矮小化する動きが見られる

  • しかし、この問題が長年黙認された背景として「事務所の待遇」と「芸能界の構造」が深く関与しているため、単なる性加害問題ではなく労働環境・人権問題として捉える必要がある

この記事で理解できること

  • ジャニーズ事務所に入所したジュニアたちは、「事務所の待遇」と「芸能界の構造」の問題によって、ジャニー喜多川氏およびジャニーズ事務所に対する力関係が圧倒的に弱いこと

  • ジャニー喜多川氏による性加害は、(国内で芸能活動継続を望む)ジュニアが個人の力で対処できる範疇を明らかに超えており、「事務所全体の責任」であり「芸能界全体の責任」であること

***

*ジャニーズ事務所に在籍してジャニーズJrとして活動するタレントは「ジュニア」と表記します

*事務所全体について言及する際は「ジャニーズ事務所」と表記し、ジャニー喜多川氏個人とは区別します

 故ジャニー喜多川氏によるジャニーズ事務所所属タレントに対する性加害問題。これまでも被害者が声をあげることはあったものの大手メディアは長年黙殺してきたため大きな注目を集めることはありませんでした。しかし、今年3月のBBC特集番組放送に加え、4月12日に元ジュニアの岡本カウアン氏が外国特派員協会で記者会見を開いたことを皮切りに被害者たちの告発が相次ぎ、一部メディアが報道し始めるなど様相は一変しました。

ただ、国内メディア報道や著名人コメントでは、あくまでも加害者と被害者の1対1の関係性に着目して「当事者間では信頼関係が成立していた」「被害を訴えている本人ですらジャニー喜多川氏のことが今でも好きで、感謝していると言っている。だから問題ない」等の理屈で、問題を矮小化する動きが見られます。

私はこれが大変なミスリードであると感じたため、岡本氏の記者会見の5日後に半ば衝動的にこのようなツイートをしました。

犬飼淳
@jun21101016
ジャニー喜多川氏の件は、デビュー前の待遇の悪さ(給料の低さ、入金の遅さ、ジュニアの人数に対するマネージャーの少なさ)も大いに関係しているように思うので、なおさら事務所全体の責任では?

性加害にとどまらず、労働環境の問題。
2023/04/17 21:53
11Retweet 32Likes

この問題は非常にセンシティブであることに加え、直接的な関係者ではない自分が言及するのは筋違いであると感じていたため、それから3ヶ月間、私はこの問題については静観していました。しかし、未だに国内メディアの報道では本質的な問題に焦点が当たっていないように感じます。海外の捉え方に目を向けると、今月下旬から国連人権理事会による来日調査が始まります。この機会に労働環境や人権の問題に国内メディアも焦点を当てざるを得なくなる可能性があると考え、今回のニュースレターでは私が認識している内容に基づいて言及することにしました。

まず、私が声を大にして言いたいのは、この問題が長年放置された背景には間違いなく「ジャニーズ事務所の待遇」と「芸能界全体の構造」というジュニア個人の力では対処できない大きな問題が立ちはだかっているということです。

©️2023 Jun Inukai

©️2023 Jun Inukai

「芸能界の構造」の問題によって、ジャニーズ事務所を退所したら日本で芸能活動を続けること自体が困難。そのため、ジュニアはジャニーズ事務所への不満が強くても所属し続けるしかなくなり、所属先の選択肢を制限されています。つまり、ジャニーズ事務所に対するジュニアの力関係は圧倒的に弱いわけです。この問題には国内メディア(特にテレビ)も深く関与しているため、未だに問題の背景を報じないのは当然と言えば当然です。

さらに、「事務所の待遇」の問題があるため、ほとんどのジュニアは「何としてでもデビューして待遇を改善したい」という強い動機付けがなされます。そのため、デビューの決定権を持つジャニー喜多川氏からの評価を高めなければならず、ジャニー喜多川氏との関係性において選択肢を制限されます。つまり、ジャニー喜多川氏に対するジュニアの力関係も圧倒的に弱いです。

***

私がこのように考える理由は、実は私自身がジャニー喜多川氏による性加害は間違いなく事実であると確信する出来事を10年以上前に経験したからです。

誤解を避けるために補足すると、私自身は生前のジャニー喜多川氏と面識はありませんし、ジャニーズ事務所とも直接的な関係は一切ありません。ただ、2000年代前後に一時的にジャニーズ事務所に所属したジュニア複数名とたまたま面識があり、本人たちから同事務所の内情を聞かされることが度々ありました。こうした自らの経験から本件は非常にセンシティブであると理解しているため、先ほど紹介した今年4月の衝動的なツイートから考えを整理するまでに3ヶ月以上を要した面もあります。

今回のニュースレターでは、未だにほとんどの国内メディアが焦点を当てていない性加害問題の背景について、元ジュニアたちが明かした耳を疑うエピソードの数々に基づいて指摘していきます。

本編の目次

  • 事務所の待遇の問題(=事務所全体の責任)

  • 芸能界の構造の問題(=芸能界全体の責任)

  • あとがき 〜性加害は事実であると確信した出来事〜

©️2023 Jun Inukai  *詳細は本編で説明

©️2023 Jun Inukai  *詳細は本編で説明

©️2023 Jun Inukai  *詳細は本編で説明

©️2023 Jun Inukai  *詳細は本編で説明

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