【横浜市長選挙2021】カジノの是非を問う住民投票の実現可能性

横浜市長選挙に向けたニュースレターの4回目。「カジノの是非は住民投票で決める」と主張する候補者がいることを踏まえ、住民投票実施の流れを整理して実現可能性を考えます。
犬飼淳
2021.08.08
誰でも

こんにちは。犬飼淳です。

本日(8月8日)、告示を迎える横浜市長選挙(8月22日投開票)について4回目のニュースレターをお送りします。

カジノ反対を掲げている候補者の中にも、「カジノは即撤回」と主張する候補者(田中康夫氏など)と「カジノの是非は住民投票で決めるべき」と主張する候補者(郷原信郎氏など)がいます。

※郷原信郎氏の住民投票実施についての主張は以下リンクをご参照ください。

nobuogohara.com

※郷原信郎氏は8月5日に立候補を取りやめたものの、得票率が25%に満たずに再選挙となった場合の出馬には含みを持たせているので、これまで通りに候補者として扱います。

しかし、カジノを推進する自民・公明が過半数を占める横浜市会において今年1月に住民投票は否決されており、そもそも現在の議会構成では住民投票を実施することがいかに非現実的かを今回はお伝えする予定でした。

・・・・が、住民投票の制度を調べるうちに、私自身が大きな思い違いをしていたことに気づいたため、今回は正直にそのことをお伝えしたいと思います。

結論から言えば、首長の発議であれば住民投票を実施できる見込みは高いです。(首長発議の場合、議会の可決要件が住民発議よりも緩いため)

①住民投票実施までの流れ

まず、住民投票実施までの流れを地方自治法の規定に基づいて整理した結果を下記のスライド①に示します。

※︎厳密には、住民投票は個別設置型(個別テーマを対象に定めた住民投票条例に基づいて実施)と常設型(各自治体があらかじめ定めた住民投票条例に基づいて実施)の2種類があります。ただし、横浜市には現時点で常設型を定める条例は存在せず、制定するだけでも時間を要するため、今回は個別設置型に絞って説明します。

©︎2021 Jun Inukai
©︎2021 Jun Inukai

住民、議員、首長の誰が発議するのかによって、流れは大きく異なります。

特に重要な違いは議会審議を通過するための要件です。住民発議と議員発議の場合は過半数の賛成が必要ですが、首長発議の場合は反対が3分の2未満であれば可決されます。

冒頭で私が述べた「思い違い」はここにあります。当初、発議が誰であっても議会で過半数の賛成が必要だと思っていたため、住民投票実施は実質的に不可能だと考えていました。が、この要件であれば首長発議の場合は議会で可決される見込みがあります。

具体的に2つのケースについて、流れを詳しく見ていきます。

***

②住民発議の住民投票が否決された流れ(2021年1月)

今年1月8日、住民発議による横浜市カジノ誘致の是非を問う住民投票は議会で否決され、住民投票は実施されませんでした。その流れを下記のスライド②に示します。

©︎2021 Jun Inukai
©︎2021 Jun Inukai

住民発議の場合は議会で過半数の承認が必要になるため、当初から想定されていた通り、カジノを推し進める自民・公明が過半数を占める議会であっさりと否決されました。必要署名数(約6万筆)を大幅に上回る約19万筆を集めたにもかかわらず、議会審議の壁を越えられなかったのです。

否決当日の無所属・井上さくら市議による以下の反対討論を観れば、多数決の力で否決する横浜市会の異常さが分かると思います。

※︎この住民投票否決をめぐる詳細は、私が今年1月13日に公開した以下記事を参照ください。

hbol.jp
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③首長発議による住民投票の想定される流れ

次に、カジノの是非を住民投票で決めることを主張する候補者が新市長に当選した場合に想定される流れを下記のスライド③に示します。

©︎2021 Jun Inukai
©︎2021 Jun Inukai

まず、首長発議の場合、首長が条例案を提出すれば住民の署名や議員の賛成は必要なく、いきなり議会による審議に進みます。さらに、議会で反対が3分の2未満であれば住民投票を実施できます。

今年1月の住民発議による住民投票の議会審議において、会派ごとの賛否は以下の通りでした。

否決に賛成51名:自民35名、公明16名

否決に反対34名:立憲・無所属フォーラム20名、共産9名、他5名

※「否決に賛成」は住民投票実施に反対、「否決に反対」は住民投票実施に賛成を意味する

2023年に予定される市議会選挙まで議会構成は大きく変わらないことを踏まえると、2021年1月と同様に自民・公明の全員が住民投票実施に反対しても全体の60% (=自公51名/議長を除く全85名)に過ぎず、2/3(≒66.6%)未満であるため可決される見込みが高いです。

***

まとめ

首長発議であれば、郷原氏が主張するカジノの是非を決める住民投票を実施できる可能性があることを今回のニュースレターでお伝えしました。

ただ、そもそも本当にカジノに反対であれば、新市長がIRを申請しなければ済む話なので、わざわざコストをかけて住民投票を実施する必要性は無いのですが・・。

また、山中竹春氏は「カジノは即撤回」を主張しているものの、山中氏を支援する立憲民主党 神奈川県連合の代表を務める阿部知子議員は7月13日時点で住民投票実施に賛成しており、当選後に住民投票実施に向けて動く可能性は十分あると考えられます。

もし山中氏が当選後にカジノの是非を問う住民投票を実施するようなことがあれば、「カジノは即刻撤回して、コロナ対策に集中する」という山中氏の現時点の訴えは早々に矛盾することになるでしょう。

今回のニュースレターは以上になります。

2021年8月8日 犬飼淳

***

P.S.

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参考文献

  • 中島孝司「住民投票制度の手引 条例の制定から運用まで」国政情報センター, 2020
  • 「住民投票制度化への論点と課題」社会経済生産性本部, 2002年


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